日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P115
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メコン川下流域のポイントバー発達域での河道の発達・変遷過程
*桶谷 政一郎春山 成子深野 麻美
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抄録

1. 背景
 蛇行州の堆積過程に関して、Allen(1970)のモデルが典型例とされる。ところで、メコン川の下流部のカンボジア地域については、久保(2003, 2006)が洪水特性に着目し、またOketani et al. (2007)が氾濫原の地形特性に着目し、氾濫原の地形区分をおこなっている。さらには、Hori(2007)、Tamura(2007)によって、対象地域周辺の沖積層の地質構造・堆積年代が明らかにされつつある。また、(社)土木学会水理委員会(2000)によれば、メコン川河道の水平方向の遷移は、おおよそ10m/yrであるとしている。しかしながら、同地域での、メコン川河道の蛇行の前進や側方移動の過程についての知見を与えるには至っていない。
 そこで本研究では、メコン川の下流域でポイントバーが明瞭に見られる、カンボジアのコンポンチャムからプノンペン間の河道を対象として、河道の遷移過程を明らかにする。

2. 研究対象地域・河川
 メコン川の下流部は、いわゆる「メコンデルタ」と総称される広大な沖積平野を持ち、対象地域はそのメコンデルタ頂部より、ベトナム国境に至る地域の一部である。

3. 研究手法
 対象地域のなかで、計測作業のアクセスに適した蛇行州を1箇所選定した。蛇行州の発達方向に沿うと思われる横断線を一つ設定し、横断線上の3箇所にて、それぞれ、約300cm深までの試料の採取・層相観察を行った。資料の採取時期は、2007年6、8月である。それらのそれぞれ2点の土壌を年代測定の試料として用いた。年代測定は、(株)パレオ・ラボに依頼した。
 また、オルソ化SPOT画像を用いて、蛇行州のリッジをトレースし、発達方向とその過程を平面的に捉え、年代測定の結果とあわせ、蛇行州の発達過程・移動速度を求める。

4. 結果・考察
 柱状図(図)によると、地点070607では、上方に向かって堆積厚の薄くなる砂・シルトの互層が見られた。蛇行洲の前進により、堆積物の供給量が減少したことが伺える。地点070815ならびに地点070817については、明瞭な砂泥互層は、目視では確認できなかった。氾濫源濠堆積物の可能性もあるが、表層付近の細粒堆積物を除いては、粗粒砂層を挟む細砂層が主となる。地形図上で約650m河岸より内陸である地点070607での年代値より蛇行州の遷移速度を算定すると、0.37~0.50m/yrの横移動速度との結果を得た。さらに内陸側の2点に関しては、年代の逆転が生じていた。この区間で河道のカットオフが生じていた事を示唆する。

【文献】
Oketani, S. et al. 2007. Floodplain Characteristics of the Mekon Delta in Cambodia. Geographical Review of Japan. 80(12):693-703
(社)土木学会水理委員会, (社)国際建設技術協会. 2000. メコン河調査団報告2000年3月
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© 2008 公益社団法人 日本地理学会
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