日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P210
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GISを利用した考古学情報データベース作成
福岡市史における試み
*宗 建郎黒田 圭介磯 望黒木 貴一
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抄録

 福岡市史では考古特別編として環境,景観,遺跡といったキーワードで多様な側面から福岡の歴史を先史から現代まで通覧する巻が作成されている.その中で地形の変遷や遺跡立地の変化から読みとれる歴史像をGISで表現することが試みられている.専門的な学術データベースとしての側面と,専門家ではない市民一般に広く公開した際のわかりやすさという側面との二つの面を兼ね備えた考古学情報のデータベース化を目指して ,GISによるデータ整備を進めている.本発表はこのデータ整備の手法と,考古学的情報をGISによって整理する際の問題点について紹介する.
 データ整備はデータベース構築と,地図情報の収集に分けて行っている.データベースは遺跡名や発掘調査地点名,そしてそれらの所在地とIDといった基本的な情報を集めた基盤データベースが整備されている.それに付加するべき遺跡の情報は各執筆担当者がデータ整理を行い,基盤データベースと結びつけることによって考古学情報データベースを構築している. 地図情報の収集はGISソフトとしてArcVeiwを用いており,旧版の地形図や都市計画図,DEMといった基盤地図の整備と,包蔵地や発掘調査地点などの考古学的情報の作成に分けられる.
 考古学的情報のGISによるデータベース作成によって時代別の遺跡の分布やある特徴を持った遺跡の分布を速やかに表示することが可能になった.またそこからの空間分析も現在進めている. 三次元表示による景観イメージの作成も進めており,GISによる考古学情報データベースと組み合わせることによって,考古学を専門としない人々にもわかりやすい表現を目指している.
 データの収集にあたっては過去の発掘成果の報告を利用しているが,空間的な情報を意識されていないそれら過去の報告はデータの単位が包蔵地と発掘調査地点が混在していたり,遺跡名や遺跡名が示す範囲が研究の進展と共に移り変わっていたりするため再整理が必要である.また,考古学の報告において多く用いられる発掘調査地点は,ある時代の空間利用のまとまりを示すものではない.どのようにそれらをまとめ,空間分析を行っていくのかが今後の課題であると考えている.
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© 2008 公益社団法人 日本地理学会
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