日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S507
会議情報

地方銀行経営者からみた「地方」と銀行合同政策
*川崎 俊郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 本報告では1920年代以降、銀行合同政策に対する地方銀行経営者の対応を通じて、彼らの国土空間に対する認識を明らかにした。銀行合同政策は1922年から36年にかけて地方的合同から一県一行主義へと統制を強化する方向で進められた。しかしこれに従わなかった府県が12あり、従った府県の中にも結果的に一県一行主義が成立した府県が5つあった。こうした政策の結果は地方銀行経営者の国土空間の認識と関係があった。彼らは必要な場合、銀行合同施策に従い支店網の拡大と資本金の強化を行った。その地理的範囲は府県域を超えず、郡域から府県内の地域区分にとどまった。この点で地方銀行経営者は公的な立場から合同政策を受容したといえる。しかし、この地理的範囲を超えて政策的な合併を行った場合、経営破綻を起こし、逆に銀行合同が頓挫することもあった。この種の合併に関して地方銀行経営者は慎重であり、公的立場よりも経営者としての立場をとることが多かった。これは地方銀行経営者の多くが地域産業、とくに農業とその関連産業に強く結びつけられており、合併によるスケールメリットを生かして、府県領域を活動範囲とすることができなかったためと考えられる。
著者関連情報
© 2008 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top