日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P814
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ナミビア半乾燥地域におけるヤギの日帰り放牧の季節による差異とその要因
―GPS首輪を用いた長期間の放牧データより―
*手代木 功基斎藤 仁
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抄録
はじめに
ナミビア北西部の半乾燥地域では,年変動が大きく不確実な降水のもとで,植生に依存した牧畜が地域住民の重要な生業となっている.人々は放牧キャンプなどを設置して定期的に移動しながら家畜を飼養することで脆弱な環境に対応してきたが,歴史的な背景などから定住して同じ場所で放牧をしている人々も存在する.そのような地域で,植生と人間活動の結節点ともいえる放牧活動が年間を通してどのように営まれているのかについてはよくわかっていない.
そこで本発表では,定住して家畜を飼養している人々が行っているヤギの日帰り放牧のルートに着目して,その季節による差異をもたらす要因について検討する.放牧ルートの把握には,近年小型化したGPSロガーをヤギに取り付けるという手法を用いることによって,長期間の正確なデータの取得を可能とした.
方法
調査地は,ナミビアのクネネ州南部に位置するレノストロコップ村である. 調査は2008年12月から翌1月(雨季の初め)と2009年6月から8月(乾季)に行っている.ヤギの放牧ルートは,小型GPSロガー(SONY GPS CS1)を取り付けた首輪(GPS首輪)を特定のヤギに装着して調査期間中記録した.
また期間中のそれぞれ5日間は,採食行動の追跡調査を実施した.その際には特定のヤギが採食している植物種とその採食時間を15分間隔で記載した.植生調査は,250m間隔のグリッドをGPSを用いて作成し,その格子点上に調査区を設置して出現種の記載と出現個体数の計測を行った.
これらの現地データとDEMデータ等をもとに,GISソフトを用いて日帰り放牧の季節による差異やその要因について解析した.
結果と考察
雨季初めの計31日間と乾季の計27日間の放牧ルートのGPS首輪のデータから,放牧を行う場所は雨季・乾季ともに集落よりも主に北側に偏っており, 地域全体が無秩序に放牧場所となっている訳ではないことが明らかとなった. しかし,雨季と乾季で放牧ルートが密集している場所には違いがみられることから,上記の放牧場所の中でも季節によって頻繁に利用する場所が異なっていると考えられる.
その要因として,場所による植生の違いが影響していることが植生調査結果から示唆された.また採食行動の調査から,ヤギは季節によって採食物が異なっていることが明らかとなった.それには植物種ごとの着葉時期の違いが関わっており,それに応じてヤギの採食物には違いがみられた.したがってヤギの日帰り放牧ルートには,季節によって異なる,採食可能な植物の分布が大きく影響していると考えられる.
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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