日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P909
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河川流域の水環境データベースに関する地理学的研究
―利根川を事例に―
*都筑 俊樹小寺 浩二
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抄録
I はじめに
 河川の環境保全や流域管理を行う上では、その河川流域における水環境の現状を理解する必要がある。そのためには、様々な水環境情報を整理し、データベースを構築、さらには流域の「水文誌」や「水環境地図」などの水文特徴をまとめた地誌を作成し、流域の水環境全般をわかりやすく図化・視覚化して表現するが求められる。そこで当研究室の「水環境の地理学」研究グループでは、2000年以降、様々な流域において「河川流域の水環境データベース」の作成を続けており、更なる水環境データベースの充実を目指している。そして、本研究では、流域面積日本一でもある利根川について、過去の研究事例を踏まえて作成したデータベースと流域特性を紹介する。
II 流域概要
 利根川は流域面積16,840km2(全国第1位)、幹線流路延長322km(全国第2位)の日本を代表する大河で、群馬県・新潟県県境の越後山脈を水源に関東平野を北西から南東へ流れ、千葉県銚子市において太平洋へと注ぐ。本河川は流域の1200万人に給水し25万haの水田を灌漑し、また、流域内の畑地、平地林の面積も日本最大級である。主な支流は吾妻、片品、烏・神流、渡良瀬、小貝川がある。
III 研究方法
 水文水質データベースや国勢調査などの既存の統計データを使用し、GISを用いて各支河川の水文特性をまとめ、視覚化した。また、利根川とその支流において、流域全体を対象とした現地調査を行った。2008年11月12日から15日にかけて、本流・支流を含め合計96地点において水文観測を行った。観測項目は、水温、電気伝導度、pH、RpH、COD、アルカリ度、イオンクロマトグラフによる主要溶存成分分析である。これらの現地調査結果は図化し、流域の特徴を把握するとともに、考察を加えた。
IV 結果と考察
 水質調査の結果から、上流部と下流部でのCODやECの違いだけでなく、各河川毎の差異も見ることができた。当然ながら、人的影響の少ない減流域ではCODやECの値は低く、下流部で高くなる傾向はみられるが、それだけでなく、特にECにおいては、吾妻川や神流川流域では上流部にも関わらず高い値を示しており、その他の項目でも各支流によって特徴が異なることが示された。
V おわりに
 本研究では利根川における流域特性を研究し、各支流ごとの水質の差異を確認、水文特性の把握した。  今回は本流とその支流というふうに考えたが、今後は各流域ごとに区切り、その中での差異や特性についてより詳細で、また、客観性のある研究が必要である。
参 考 文 献
平山智之・小寺浩二・都筑俊樹(2008):河川流域の水環境データベースに関する地理学的研究―北上川を事例に―,日本地理学会発表要旨集.
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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