日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 203
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東アジア地域における地上気圧分布パターンの客観分類
*加藤 央之永野 良紀田中 誠二山川 修治
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抄録
 地球温暖化に伴う気候変化により,平均場の変化とあわせて日々の天気パターンがどのように変化するかを知ることは重要である。これまで,日々の天気パターンすなわち地域的な気候・気象現象を説明する背景として地上天気図(気圧配置パターン)のパターン分類(吉野・甲斐,1977;気候影響利用研究会,2002など)結果が有用な指標となっていた。しかし,この分類では複雑なパターンになると,分類に主観が入る可能性があり,また,地球温暖化時の予測結果に対しては同等な天気図が準備されないため,現在と将来の定量的な比較を行うことは難しい。そこで,海面気圧の分布パターンを多変量解析を通じて客観指標に置き換え,これを分類することにより,現在と将来の定量的な比較を行うことを試みる。本発表では,まず東アジアにおける10年間の午前9時の海面気圧データ(3653日)を用いた手法の構築を行い,従来の天気図分類パターンとの比較を通じて手法の妥当性の検証を行う。  解析には1991年~2000年の東アジア地域(北緯20度~52.5度,東経110度~160度)における午前9時の海面気圧データ(NCEP/NCARの再解析データ)を用いた。水平解像度は緯度2.5度×経度2.5度である。海面気圧データに主成分分析を行い,得られた第1~第6主成分までの主成分スコアに対する6次元空間内で3653日のクラスター分析(群平均法)を行った。ここで主成分については各年毎のデータを用いた予備解析の結果から,毎年安定した変動パターンとして出現する第6主成分までを採用した。また,クラスター分析についてはクラスター間の距離が急激に増加する直前の7グループを大分類とし,それぞれのグループについては別途詳細分類を行って結果を調べた。  主成分分析の結果,第1主成分は大陸の高(低)気圧の盛衰を示すパターン,第2主成分日本の東方における低気圧の盛衰を示すパターンであり,寄与率はそれぞれ51%, 16%である。また,第6主成分までの累積寄与率は87%で対象領域の気圧変動の大部分を説明できる。クラスター分析の結果分類された各グループのうち,代表的な2グループの月別出現頻度を図1に示す。また,各グループの平均パターンを図2に示す。各グループの出現頻度は明確な季節特性を示した。従来の天気図分類パターンとの比較により,いくつかの相違点が明らかになった。これは例えば西高東低の冬型気圧配置としても,本手法ではその強度による分類のほか,大陸の高気圧が発達したものか東海上で低気圧が発達したものかを明確に区別することによるものである。
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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