日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 204
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日本付近の11月における前線出現頻度と気象場との関係
*田中 誠二加藤 央之山川 修治
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抄録
1.はじめに
 前報では前線の出現と海面気圧との関連性について発表を行った.しかしながら前線の出現について背後関係にあるものは海面気圧のみではとらえられず,高層における気象場などとの関係も考慮に入れる必要がある.そこで本発表では,前線の出現頻度と高層の気象場についての関係を調べ,その関連性を考察した.
2.研究方法
 まず,前線の出現パターンを把握するため,気象庁作成の地上天気図より,東経110度から東経170度までを10度ごと,北緯20~65度の範囲で5度ごとに区切って出現数データを作成し,主成分分析を行った.また,NCEP-NCAR再解析データより,500,600,700,850,925,1000hPaにおける高度場,気温,東西風,南北風,および海面気圧についても同様に主成分分析し,前線出現パターンとの関係性を調べた.さらに,気象場と前線出現との相関を調べ,有意である地域を判別した.
3.結果
 11月における前線出現の主成分分析結果のうち,特に第3主成分が高層の気象場と関連性があった.以下ではこの主成分分析結果について述べる.
 11月における前線出現の第3主成分は,関東南方~沖縄付近に作用中心が現れるパターンである(図1).これは当該地域における前線出現の多少を現していると考えられる.
 11月の第3主成分は,ほぼすべての気象場と有意な関係が認められた.まず,高度場と海面気圧では,700hPa以上の高度場では日本南東方に作用中心,カムチャッカ半島付近に他の作用中心が現れるパターン,850hPa以下の高度場および地上気圧では日本東方から沿海州にかけての領域に作用中心,カムチャッカ半島の北方に他の作用中心が現れるパターンが対応していた.気温については日本の南方に作用中心を持ち,バイカル湖からカムチャッカ半島にかけての領域に他の作用中心を持つパターンが対応していた.東西風では,北緯45度付近におけるおもに東経140度以東の領域で作用中心が現れるパターン,南北風では600hPaおよび700hPaにおいて日本付近を境界にしたパターンとの対応が認められた.またこれらの結果は日本付近の地域で有意となることが認められた(図2).
 これらの結果より,11月における関東南方~沖縄付近にかけての前線の出現には,850hPa以下では大陸の高気圧(シベリア高気圧)の東方への張り出し,700hPa以上では日本東方の気圧傾度,また日本の南方と北緯55度付近との気温傾度,日本付近における偏西風の蛇行,および北緯45度・東経140度以東における偏西風の強さが関与していると考えられる.
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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