抄録
日本における代表的な漁村・水産都市は、その多くが大都市圏から遠隔の地に位置する。今回はA北海道目梨郡羅臼町および標津郡標津町を事例に、漁業ほかを中心とする村落空間の商品化を検討した。漁村・水産都市における空間商品化は、主に地域ブランド水産物、自然環境/生業/生活の体験観光地、小説・映像作品の背景地ニして具現化する。
羅臼と標津は、ともに日本列島北東端に位置する。起源を同じくし、隣接する2町ではあるが、その村落空間の商品化には共通点と相違点がみられる。「魚の城下町」羅臼は、「羅臼昆布」「羅皇」といった詳細選別型地域ブランド水産物を有し、その厳しい自然環境ゆえに知床への冒険的観光者を集客し、多くの小説・映像作品・歌謡の舞台となってきた。標津は、羅臼ほどの自然観光地ではないが、体験観光プログラムを数多く整備して観光者を引きつけ、遡河鮭の捕獲施設を改良した「標津サーモンパーク」は「サケのまち」標津を代表する。羅臼と標津に共通するのは、「知床世界自然遺産」を良き地域イメージとして利用する点と、冬期の自然環境の厳しさが空間商品化の周年化を妨げている点である。