タイ王国バンコク周縁部では都市拡大に伴い,農地転用による住宅地と農地の土地利用混在が生じている.本研究では,バンコク近郊に位置するノンタブリ県バンメナン地区を対象として,住宅地と農地が混在する地域における適切な廃棄物再利用と資源循環施策を検討するため,対象地区住民の生活形態別の廃棄物排出と処理に関し,現場実態調査を行った.
具体的には,1:4000デジタル都市計画基本図を基図とし,空中写真判読および現地踏査結果も援用しながら,GIS上で対象地区の全家屋を,水田農家,園芸農家,新興住宅などに細分類した.その後,分類した家屋タイプ毎にサンプルを抽出,質問票を携行した世帯訪問調査を実施,廃棄物排出特性を把握するとともに,実際に排出された廃棄物を組成分類して一週間計量調査を行った.廃棄物フローに関しては,行政,民間関連セクターを訪問し聞き取り調査を進めるとともに,現地役所と交渉の上,公式ごみ収集車のGPSトラッキング調査を行った.
その結果,対象地区の廃棄物フローは,行政,民間およびコミュニティによる自主的な廃棄物回収・処理が混在していたが,それらの統合管理は行われておらず,地区全体にサービスが行き届いていないことが明らかになった.また,廃棄物組成は生ごみと農業廃棄物などの有機系廃棄物が大きな割合を占めていた.GPS/GIS空間解析では,対象地域の全廃棄物発生量に対する実質回収率は,45.5-51.1%と推定された.