日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 703
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石垣島の河川流域特性と河川水水質特性に関する地理学的研究
*米山 亜里沙小寺 浩二飯泉 佳子寺園 淳子
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抄録

_I_ はじめに 南西諸島の島々の河川水や地下水は、多様な自然環境のもと、日本の他地域とは異なった水質であることが知られている。沖縄県の島々によっても水質が異なり、石垣島は他島と比較して、水質が多様である(兼島1965・東田1994)。沖縄県が抱える一つの水環境問題として農地からの土砂流出があり、石垣島でも名蔵川や轟川で流域単位での土砂動態や栄養塩流出解析が行われている。流域単位での研究が進む中、小自然流域を含んだ流域ごとの比較や位置づけに関しては研究の余地がある。本研究では、石垣島の河川の特性把握と広域な河川水水質の分布を明らかにする。 石垣島は亜熱帯に位置する、面積222.83kmの沖縄県で3番目に大きい島である。於茂登岳(525.8m)を始めとした於茂登連峰が北部に位置し、それぞれ西側と東側に半島が伸びている。南部には平地が広がり、さとうきびやパインアップル栽培などの農業生産が行われている。人口は、南部の市街地に集中しており、他の地域は集落が散在する。 _II_ 研究方法  2008年5月に南部域45地点、8月に全域59地点にて水質調査を行った。調査項目は、水温・pH・RpH・COD・EC・DOである。その後、サンプリング水は、研究室に持ち帰り、アルカリ度測定、陽イオン・陰イオン分析、全窒素・全リン分析を行った。河川流域を比較するために、25000分の1地形図より水系図を作成し、27流域の流域特性値を算出した。また国土数値情報より土地利用図を作成し、流域ごとの土地利用面積、割合を算出した。 _III_ 結果と考察 流域面積は宮良川、名蔵川、轟川などを除くと5km2以下で、本川の長さも5kmである小河川が多い。河川断面は、急勾配の河川、河口から0.5~1km周辺まで比較的緩やかな河川、そして流路の多くが低地を流れる河川に分けら、地形によって異なると思われる。また水系頻度と森林割合、水系頻度と水系密度に相関が見られた。 河川水はアルカリ土類炭酸塩型、アルカリ土類非炭酸塩型、アルカリ炭酸塩型に属する。於茂登花崗岩類を流下する河川水は特にイオンの含有量が少ない傾向を示した。島の南部では石灰岩層からの影響によりCa-HCO3型を示し、島の中部域よりも顕著である。5月と8月の季節的な変動は、8月の方が河川水中のイオン濃度が高く、夏の方が河川水中に溶解する物質が多いことが示唆された。 全窒素濃度は新川川、轟川、宮良川支流アヤマシ川で高く、人間活動や農業生産による影響と思われる。 _IV_ おわりに  石垣島は、夏には頻繁に台風が接近する。そのため、平水時と洪水時には河川水水質は異なることが予想され、その点に関しても、今後調査研究が必要であると思われる。 参 考 文 献 東田盛善(1994):沖縄県石垣島の陸水の水質,工業用水,No.434,35-46 兼島清(1965):沖縄の河川および地下水の水質,工業用水,No.81,30-37 坂西研二・中村乾(2007):石垣島宮良川流域における懸濁性土壌,窒素およびリンの推定流出量,水土の知,Vol.75 No.9,29-32

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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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