抄録
1.はじめに
これまで,海岸侵食について数多くの先行研究がなされているが,調査期間が短いことや,汀線変化を載せていても場所を把握し辛いという問題点がある。
本研究では加越海岸全域について明治時代から現在までを調査期間とし,海岸に人の手が加えられていない時代からの海岸線の変化を経年的に把握することを目的として分析を行った。
前回の発表では,解析の結果が中心であったが,今回は,解析方法について詳しく述べる。
2.研究対象地域
石川県羽咋市滝町滝崎~福井県坂井市三国町黒目福井新港まで約100kmの加越海岸を対象地域とした。
この海岸は,全国的に見ても顕著な海岸侵食が発生している地域であり,調査期間内にダム建設,砂利採取,護岸工事など人の手が加えられている。
3.解析方法
研究対象地域全域の地形図・空中写真をデジタル化したものに,コントロールポイントを打ち,簡易的に幾何補正を行い,それらのレイヤを重ね合わせた。次に,幾何補正をした地形図・空中写真から読み取ることができる海岸線を年代ごとにトレースし,その海岸線を1000m区間に分割し,各年代間の変化量を求めた。
使用した地形図と空中写真については,基準図とした地形図は,縮尺2万5千分の1を13枚,作業図で使用した地形図は縮尺2万5千分の1,5万分の1を13枚,空中写真は,1947年~1952年の米軍撮影写真は縮尺4万分の1のものを33枚,それ以降1967年~2002年のものについては2万分の1または2万5千分の1のものを104枚使用した。
なお,地形図・空中写真は研究対象地域全て同じ測量・撮影年のものを入手できないため,本来ならば,時間補正を行う必要があるが,本研究では撮影年が最も近いものを選んだ。
使用ソフトは,ESRI社ArcGIS 8.3,使用スキャナーは,空中写真については,EPSON ES-8500,地形図についてはGRAPHTEC CS300-10eN,スキャン設定は,空中写真については、イメージタイプは8ビットグレースケール,解像度800dpi、TIFF形式により保存,地形図については,イメージタイプは8ビットカラー,解像度400dpi,TIFF形式により保存した。
作業手順については,まず基準図は,スキャナーで取り込んだ2万5千分の1地形図のデータをArcGISでジオコーディングする。作業図については,スキャナーで取り込んだデータを基準図に重ね,コントロールポイントを打ち,レクティファイをし(図1),海岸線をトレースする。
ここで,今回の幾何補正は平面的な補正のみの簡易的な幾何補正である。しかし,本研究では海岸線のみを取り扱い,高度が0である為,簡易的な幾何補正でよい。
計測誤差については,地形図に関しては,佐藤(2000)と同じ方法で,機械誤差(0.1mm)と描画誤差(0.2mm)と標定誤差(0.5mm)が含まれる。よって,使用地図の縮尺を考慮して,本研究では2万分の1地形図では10m,5万分の1地形図では25m以上前進,後退した区間について分析対象とした。
空中写真については田中ら(1973)によると,誤差には大きく分けて7点挙げられるが,1.カメラ軸が鉛直軸から傾いていることによる誤差,2.潮位差にもとづく誤差の2点が支配的とされる。
このうち1についてはGIS上でレクティファイを実行し,地形図と重ね合わせているため,考慮する必要はない。
次に2については,満潮位(High water Level:H.W.L)と干潮位(Low Water Level:L.W.L)の差と前浜勾配の逆数を乗じた値となる。各海岸のH.W.LとL.W.Lとの差と現地調査によって計測した前浜勾配については以下に示す(表1,表2)。この結果,誤差の最大値は14mになり,本研究では14m以上前進・後退した区間を分析対象とする。
4.結果
これらの作業により,地域別による海岸線の変化,各海岸線の年代別による変化,海岸線変化量の時空間変化を表すことができた。結果の詳細については前回分を参照。1年間当たりの海岸線の変化量は1968年~1974をピークに後退した。しかし,1974年以降になると前進に転じた。