日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S103
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国土地理院の地図における「日本海」の表記について
*磯部 民夫
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抄録
1.国土地理院の地図における「日本海」表記について  国土地理院は、我が国の基本図を様々な縮尺で作成しており、地図帳や一般の地図などに幅広く利用されている。これらの基本図における「日本海」の表記は、過去の経緯も含めて以下のようになっている。 国土地理院は、デジタル形式のものも含めて縮尺2500分1~500万分1に相当する基本図等を作成しており、「日本海」は縮尺50万分1以下の小縮尺地図に表記している。 国土地理院の前身である陸地測量部は、明治33年(1901年)に作成した「50万分1京都及大阪近傍地図」において、「日本海」という表記を用いている。陸地測量部時代の明治の後半に作成された「100万分1東亜輿地図(新潟)」等でも「日本海」と表記している。また、陸地測量部設置以前では、慶応3年(1867年)に陸軍所作成の「亜細亜略図」や明治4年(1871年)に兵要地理局作成の「亜細亜露西亜新図」でも「日本海」と表記している。 昭和10年代になると、「1000万分1亜細亜大陸図」「250万分1東亜大陸図(その1)」「200万分1大日本輿地図」「1000万分1全ソ行政区画図」「1000万分1太平洋全図」が作成されているが、いずれも「日本海」と表示している。  戦後になって設置された地理調査所においては、昭和20年から30年代に作成された「80万分1日本土地利用図_II_」、「200万分1日本全図」「2200万分1世界全図」「200万分1日本主部」「250万分1日本とその周辺」に「日本海」と表記している。  以後、国土地理院は、昭和40年以降、「100万分1国際図」「50万分1地方図」「100万分1日本」「300万分1日本とその周辺」「500万分1日本とその周辺」や「日本国勢地図」を作成しているが、これら全てについて「日本海」と表記している。  また、英語版では、陸地測量部時代の大正15年作成「200万分1MAP OF JAPAN」には「JAPAN SEA」と表記しており、昭和2年作成の「100万分1万国図(KANAZAWA)」には、当該海域に対する表記は本図中にないが、概略図には「JAPAN SEA」と表記している。また、昭和40年以降の「100万分1国際図」「THE NATIONAL ATLAS OF JAPAN」「500万分1 JAPAN AND ITS SURROUNDINGS」にも「JAPANN SEA (NIHON KAI)」と表記している。 このように、国土地理院及びその前身の陸地測量部等は、その作成した基本図等において、日本海の海域には一貫して「日本海」又はその英語名をほとんど表記している。国土地理院は、今後とも自ら作成する基本図等において「日本海」を明記していく方針である。    500万分1 JAPAN AND ITS SURROUNDINGSの一部 2.国連地名標準化会議への参加  国土地理院は、概ね5年に1度開催される国連主催の「国連地名標準化会議」に1967年の第3回会議より参加している。この会議の目的は、地名の国際統一に向けた、国内統一の促進と地名表記法等の国際的情報交換である。この会議に加えて、各国の地名専門家で構成される「国連地名専門家会合」が5年間に3回の割合で開催され、地名標準化に向けた実質的な活動が行われており、国土地理院はこの会合にも毎回参加している。また、国土地理院と海上保安庁海洋情報部は、同会議の決議を踏まえ、「地名集日本」を作成している。これは、縮尺100万分1レベルの地図等に表記されている行政、居住、自然、海底地形等の標準化された地名情報を掲載したもので、「日本海」についても記載されており、国内外に配布されるとともに、国土地理院のホームページからダウンロードできる。
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