日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P906
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駅周辺におけるポイ捨て状況からみた条例の効力と防止策の検討
*香川 雄一相井 勇人
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抄録
1.はじめに
 近年,個人のマナーやモラルの低下などに伴い,駅周辺等において,たばこの吸殻や飲料容器等のごみのポイ捨ては後を絶たず,公共的環境が汚染され,美観を損ね,ごみの回収にはコストがかかるため,コミュニティあるいは,社会全体が損失を被っている.こうした事態を改善しようと,2005年段階で1,048団体(都道府県15,政令指定都市13,市区町村1,020)がポイ捨て防止に関する条例(以下,「ポイ捨て条例」と略記)を制定している.
しかし,ポイ捨て条例の抑止効力に関する研究は少なく,またポイ捨てごみを定量的に調査している事例も少ない.そこで本研究では,ポイ捨て条例の駅周辺における効力やポイ捨てに対する課題の検討・把握を目的1とし,駅周辺のポイ捨てごみの散在量・組成・散在箇所・散乱箇所の特徴を把握することを目的2とし,目的1,2を達成することにより,駅周辺のポイ捨て防止策における問題と課題を明らかにする.

2.研究方法
全国各市のポイ捨て条例の制定状況を調査した上で,ポイ捨て条例の有無,またポイ捨て条例における罰則の有無から,実態調査の対象地域として,滋賀県内の瀬田駅(大津市),南草津駅(草津市),南彦根駅(彦根市)を選択した. 次に対象とする各市において,ポイ捨て条例の問題点を明らかにし,対象の各駅において目視調査を行い,ポイ捨てごみの散在量・組成・散在箇所の特徴を明らかにする.これらの調査結果の比較・分析を行い,ポイ捨て防止策の提案を行う.

3.結果及び考察
 2009年時点で,全国各市のポイ捨て条例の制定率は56%であり,半数以上の市がポイ捨て条例を制定することによってポイ捨ての防止を図っていることがわかる.しかし,調査対象とした各駅において,ポイ捨てごみの散在量は南彦根駅,瀬田駅,南草津駅の順に多く,ポイ捨て条例を制定かつ罰則を設けている彦根市の南彦根駅が最もポイ捨てごみの散在量が多かった.
これは,南彦根駅においてポイ捨て防止に関する幟や監視員等による啓発がないことや,駅周辺にごみ箱やマナースポットの設置がないことが要因と考えられる.また,ポイ捨てごみの組成に関しては,たばこの吸殻60%と高く,まずはたばこのポイ捨てに関する対策が必要であると考えられる.さらに,ポイ捨てごみの散在箇所の特徴としては,バス停や駅周辺に設置されているベンチの周辺など,滞在時間の比較的長い場所や,人目につきにくい箇所に多いことがわかった.
 これらのことから,幟や監視員によるポイ捨て防止の啓発やごみ箱,マナースポットをバス停やベンチ付近等のポイ捨ての多い箇所に設置するなどを行い,ポイ捨てが行われにくい環境作りを行うことによってポイ捨ての防止が図れると考えられる.しかし,もっとも問題なのは,人々のポイ捨てへの意識の低さ,マナーやモラルの低下であり,ポイ捨てのされにくい環境作りを進めていくと同時に,ポイ捨てを行う人々のモラルの向上といった意識改善も進めていく必要があると考えられる.
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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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