日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 703
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地理空間情報を時空間化することの意味
*小荒井 衛中埜 貴元
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抄録
1.はじめに
 地理空間情報に時間軸を加えることで地物の高頻度な変化を容易に管理することが可能になる。そのようなデータがこれまでの地理空間情報と比べてどの様に高度利活用が可能なのかを示すことが重要である。本発表では、時空間データを試作した結果と、時空間解析の立場から時空間化されたデータの効果について考察した結果を紹介する。

2.つくば市の時空間データセットの作成
 つくば研究学園都市約185km2を対象に時空間データを作成した(小荒井・中埜:2009)。時間範囲は、研究学園都市が開発される前の1970年からの約40年間である。時空間化した地理空間情報の項目は、道路・鉄道網、土地利用(メッシュ、ポリゴン)、地形(DEM)である。作成したデータは時空間化されたデータ仕様だが、データの更新年のヒストグラムには5年毎にピークがあり、データソースの制限から実質的には5年毎の更新データに過ぎなかった。
 そこで、TXの開通により近年大規模土地開発が急激に進んでいる研究学園駅を含めた約15km2について、現地聞き取り調査を含めて1年以下の単位で地物の生成・消滅・変化を捉えて、時間精度の高い時空間データの作成を行っている。データ項目は、上記の他に建物と水系を加えている。
 地物の変化した時間が画像等の資料でしか確認できない場合には、図1に示す様な時間の曖昧性を持った概念で時間情報を捉えている。ある地点において、実際に属性Aが属性Bに変化した時間がt2として、それを示す近接の画像情報がt1とt3の場合、ここで確実に言えるのは、「t1にはAが存在しており、Bは存在していない」ことと、「t3にはAは存在しておらず、Bが存在している」ことである。すなわち、Aはt1からt3の間に消滅し、Bは同期間に発生したことになり、t1はAの消滅開始(ES)及びBの発生開始(SS)、t3はAの消滅完了(EE)及びBの発生完了(SE)となる。

3.時空間解析の立場からみた時空間データの問題点
 一般的なGIS解析ソフトでは時空間データの取り扱いが出来ず、時空間解析と銘打っても、実際には高頻度時系列データの解析に過ぎない。解析研究者向けには、時空間データセットから解析に必要な時間頻度(例えば1年毎など)でデータを切り出せれば良い。本当に重要なのは、時空間データが必要な頻度で更新されていることで、それが可能なデータ作成側の枠組みが不可欠である。
 時空間データ仕様について考察すると、道路や建物の様な発生や消滅が起こる地物については、地物毎に発生開始、発生終了、消滅開始、消滅終了の4つの時間属性を入力すれば良く、固定長のデータ仕様が設定可能である。一方、土地利用やDEMなどの必ず存在し面的に覆うデータでは、属性が変化する毎にデータ更新を迅速に行える様にするには、メッシュ形式での可変長のデータ仕様が管理しやすい。しかし、空間データ解析を行うGISソフトでは、可変長のデータを取り扱うことができない。このように、データ管理側とデータ解析側とで理想とするデータ仕様が異なり、その不統一を克服する手法を検討する必要がある。

参考文献
小荒井衛・中埜貴元(2009):日本国際地図学会平成21年度定期大会発表論文・資料集,36-37.
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© 2010 公益社団法人 日本地理学会
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