日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P709
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スーパーマーケットで販売されている味噌にみられる地域性とその地理教材としての価値
*山田 周二
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抄録
本研究は,身近な調味料である味噌をとりあげ,小・中学校の社会科で行われる地理学習において,味噌の種類と生産地を調べることによって,どのようなことが学習できるのか,をあきらかにすることを目的として, 東京と福岡の間に位置する18 都道府県の県庁所在地において,スーパーマーケットの店頭で販売されている味噌の種類と生産都道府県を 調査した.調査対象としたスーパーマーケットは,1都市につき,3~10店舗である.
1店舗当たり平均40銘柄の味噌が販売されており,その種類は地域によって大きく異なる.名古屋市,津市,岐阜市では,豆味噌の割合が50%を超えるのに対して,広島市,山口市,福岡市では麦味噌が50%を超えており,それ以外の市では,米味噌が50%以上を占めた.ただし,それぞれの地域の境界に位置する静岡市や,岡山市,高松市では,近隣の米味噌を主体とする市よりも豆味噌や麦味噌の割合が高くなる傾向がみられた.
販売されている味噌の生産地も地域によって異なる.長野県産と愛知県産の味噌は,対象とした18市すべてで販売されており,神戸市以東では,それら2県産の味噌が70から83%を占める.一方それより西の市では,それら2県産の味噌は14から40%に過ぎず,自県産の味噌や広島,大分県産の味噌が多くを占める.以上のような味噌の種類や生産地にみられる地域差から,それらを児童,生徒が調べることによって,その地域の生活文化の特徴を学習することができるであろう.
味噌の生産地は,その種類によっても異なる.豆味噌は愛知県産のものがすべての市で販売されており,それ以外の産地のものはほとんどみられない.米味噌は,長野県産のものがすべての市で販売されており,愛知,京都,富山県産のものも50%以上の市で販売されている.麦味噌は,広島,大分県産の ものが50%以上の市で販売されており,ほとんどが広島県以西で生産されたものである.
以上のような味噌の種類と産地との関係から,それらを児童,生徒が調べることによって,日本の地域による生活文化の差異を学習することができるであろう.
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© 2011 公益社団法人 日本地理学会
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