日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 502
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大都市圏郊外における地域子育て支援事業の展開
高蔵寺ニュータウンの事例を中心に
*久木元 美琴由井 義通若林 芳樹
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抄録

1990年代以降,共働きの増加や出生率の低下を背景として,子育て支援は政策課題の中心に位置し続けている.国の子育て支援の枠組みは,サービス内容や利用対象,及び運営主体の「多様化」が進んでいる.日本では,戦後の早い段階から認可保育所(基準保育)が整備されてきたが,「保育に欠ける」共働き世帯の子どもを対象とした選別的なサービスであり,教育機関である幼稚園とも運営を分離されてきた.しかし,女性の働き方やニーズの多様化によって,保育年齢や保育時間,利用者層の拡大が求められるようになってきている.こうしたニーズを満たすために,公的部門以外の主体(営利企業やNPO法人等)による参入が注目されている. 本研究では,保育サービスの多様化の一環として,非共働き世帯をも対象とした「地域子育て支援事業」を取り上げ,特に専業主婦率の高い大都市圏郊外におけるサービスの運営と利用の実態を明らかにする.大都市圏郊外は,従来,職住分離の都市空間構造における時空間的制約から「ジェンダー化された空間」として理解されてきた.しかし,近年,女性を中心とした地域形成(影山1998)や起業(木村2008),NPO等のボランタリー組織の活動(前田2008)などが注目されており,子育て支援サービスへのボランタリー・セクターの参入という点でも注目される.
本研究では,厚生労働省による「地域子育て支援拠点事業」を便宜上「地域子育て支援事業」と呼ぶ.地域子育て支援事業は,主に幼稚園入園以前の3歳未満児を持つ家庭を対象に,育児家庭同士の交流・情報交換の場や子育てに関する相談・援助を提供する事業である.
高蔵寺ニュータウンの位置する愛知県春日井市では,「センター型」拠点2か所と「ひろば型」拠点2か所で地域子育て支援事業が実施されている.高蔵寺ニュータウンの子育て広場は,スーパーマーケットに隣接するUR所有の事務所棟の空きスペースを利用して実施されている.実施主体であるNPO法人は春日井市からの指定管理を受け,地域子育て支援事業として「ひろば型」拠点の運営及び一時預かり事業を実施している. 「ひろば型」拠点は利用料無料で週6日(10~16時),一時預かり事業は週6日(7時30分~19時),実施されている.本研究では,当施設の利用者を対象にアンケート調査を実施し,116回答を得た.発表当日は,利用実態の分析結果を報告する.

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© 2011 公益社団法人 日本地理学会
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