日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P725
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旧版地形図を用いた大正関東地震前の三浦半島南部の海岸線を復元する試み
*熊木 洋太金 幸隆佐竹 健治
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抄録
相模湾を震源とする関東地震は,1923年大正関東地震と1703年元禄関東地震がよく知られている.海岸に沿いの離水波食台および化石生物遺骸の分布に基づくと,三浦半島ではこれらの地震によってそれぞれ最大約2m隆起している[Matsuda et al. (1988),Shishikura et al. (2007)].こうした関東地震の平均再来間隔に関しては,主として房総半島の離水海岸地形の年代や変位量,津波堆積物の年代および測地学的データに基づき様々な議論・推定がなされ,地震調査研究推進本部地震調査委員会(2004)は平均的に200~400年としている.三浦半島では,標高約10 m~15 mに海岸段丘面が3段認められ,それらは上位より野比1面(~5200 cal. BC),野比2面(~3300 cal. BC),野比3面(~1500 cal. BC)としている[熊木(1982);Kumaki (1985)].これらの段丘面は,地震性の隆起運動により形成された可能性がある.しかし,元禄関東地震の一つ前の関東地震に関する地形の物証は乏しく,地震の発生履歴は十分に明らかにされていない.我々は,1946年米軍撮影ならびに1963年・1966年国土地理院撮影の空中写真判読および,1921年(大正10年)測図の旧版地形図を用いた現地調査から地形分類図の作成を行った.その結果,大正地震の直前の海岸線は,現在の海岸線が従来よりも正確に復元される.また,谷底平野には海岸線に平行に形成された1~2mの小崖とそれに画された段丘面が,熊木(1982)・Kumaki (1985)により認定された野比3面の高度と現在の海岸線との間に,3段~5段形成されていることが今回の調査で判明した.
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