日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 310
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東海道線沿線の大規模工場における研究開発機能の進化過程
*鎌倉 夏来
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抄録
I はじめに
 グローバル化や知識経済化の中で,首都圏近郊に古くから立地していた工場は,近年新たな変化を見せている.本報告の目的は,東海道線沿線地域を対象とし,大規模工場用地の利用変化,存続工場の「現在地での変化」,とりわけ研究開発機能の変化を明らかにし,首都圏近郊の研究開発拠点の位置づけの変化が意味するところを検討することである.
II 対象地域と分析方法
対象地域は,神奈川県川崎市から平塚市までの東海道線沿線地域で,軌道の両側各1km以内を範囲とした.
 まず,1974年時点の従業員数100人以上の工場を抽出し,2010年時点の土地利用と比較して,変化の有無・内容を調べた.続いて,従業員1,000人以上の大規模工場26工場を対象に,「社史」,「有価証券報告書」,「日経全文記事データベース」をもとに,立地経緯,製品内容や従業員数の変化,他の事業所との関係など,工場履歴を明らかにした.そのうちの13事業所については,研究開発機能を中心に,変化の要因や立地戦略上の位置づけなどに関する聞き取り調査を行った.
III 分析結果と考察
 1974年時点から存続している工場は,165工場中81工場であった.このうち23工場が横浜市戸塚区にあり,存続工場の8割が戸塚以西の地域に立地していた.これに対し,都心により近い川崎市から横浜市保土ヶ谷区までの沿線地域では,マンションやオフィスビルに転用されたケースが多くなっていた.
 存続している大規模工場の内部では,研究開発機能を強化する動きが顕著であった.製造機能と研究開発機能が併存する「開発一体型拠点」が依然として多いものの,「開発一体型」から,研究開発活動のみを行う「開発特化型拠点」へと変化している事例も見られた.また注目すべき変化として,国内に分散していた企業内の研究開発機能を,新たな拠点に集約する動きがある.これは,他分野・他事業の研究員と共に研究活動を行うことで,研究活動の効率化やシナジー効果をねらったものとされている.
こうした変化の具体的な内容と考察については、当日報告することにしたい.
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© 2011 公益社団法人 日本地理学会
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