抄録
1 はじめに
2008年から、『地図ジャーナル』(日本地図調製業協会刊)で「地図学の聖地」という連載をしている。当初は、日本経緯度原点や日本水準原点などに行ってみた話を紹介していたが、題材に限りがあるため、最近では高校の教科書や地図帳で取り上げられている地形図を取り上げつつある。
しかしながら、次章で挙げる教科書と地図帳に出てくる地形図は全部で101枚あり、これら全てを紹介するわけにはいかない。そこで、多くの教科書と地図帳で取り上げられている地形図のうち代表的なものを、客観的に選出することを試みた。本発表では、その結果について報告する。
2 データおよび解析手法
解析には、各社が出版している地理Aと地理Bの教科書と地図帳を用いた(表1)。多くは平成17年版であるが、二宮書店については最近のものも用いた。これは、筆者たちが利用可能なものを全て用いた結果であり、他意はない。
ある地形図が教科書・地図帳に出てくれば1、出てこなければ0という名義尺度の行列を作り、数量化III類にかけた。得られたカテゴリースコアを全て用いてクラスター分析(Ward法)を行ない、地形図の特徴について調べた。
3 結果と考察
数量化III類の結果、固有値が1を超える軸はなく、第1軸でも寄与率は9.0%(相関係数 0.96)であった。第2軸以下も寄与率・相関係数とも同じような値が続いていた。
クラスター分析を行なった結果を図1に示す。このデンドログラムで特徴的なのは、結合距離が0となるメンバーが多いことである(図1の左半分)。これは、1社の教科書や地図帳にだけその地形図が出てくることを意味している。
複数の会社の教科書や地図帳に出てくる地形図は、短い距離で結合し、まとまったクラスターとなっていた(図1の点線で囲んだ部分)。これらは、地理学的にも意義のあるメンバーとなっているように思われるが(百瀬川扇状地や室戸岬の海岸段丘、旭川市の屯田兵村など)、詳細については発表当日に紹介する。