抄録
_丸1_はじめに
現在高校で学ぶ高校生1人1人が、自己の生活場で起きている日常の諸現象について毎日その1つ1つについて掘り下げて思いをはせ、それら諸現象を総合してとらえているであろうか。毎日、授業設計をおこなう上で、筆者の念頭から前記の思いはいつも離れることはない。現行の高校地歴科「地理A・B」、公民科「現代社会」を長年担当する思いはいつもこの問いかけに始まり、終わる日常であり続けてきた。日本全国各地でそれぞれを生活場にして1人1人ごとの高校生の思いのもと自己の生活場はかたちづくられてゆく。
_丸2_生活場から地域をみることの大切さ
1人1人のおかれている多様な生活場をベースに世界各地に生起している地球的課題に関する諸事象をグローカルに把握・分析し、自己の生存する時代的地域のみならず、地球的スケールの視座から、この時代的現代的課題を設定し、課題の解決の道程を展望することが高校で授業構成を展開・設定することは絶えず求められ続けてきた。
「地域調査」学習項目がはたす役割は今後も大きいものが有るとまだ考えられよう。時代的に時を見つめ将来を見定める力として、「課題設定」能力や「課題解決」能力が改めて生きる上で大切なこととなってきている。
自己の将来展望の要は環境を見定めるスキル(技能)を高校生がつくりあげことにあると考えられる。現実社会にとらえられる環境には多様なバリエーションの幅が有る。1歩を始めること。その1つのスキル力に妥当と考えられる方法、育成等について報告者はこの間、「地域調査」的学習がどのような位置をしめすべきなのかについて考察してきた。ここでは、生活場の環境の多様性の中から、古環境をとらえる1例を探ることからアプローチを再び試みたい。
_丸3_古環境を探るための地域調査学習項目の位置の再考
1:自然:地形・気候・日本の自然の項目で扱うか
_II_:地球的課題の項目で扱うか:グローカル把握スキル
身近な古環境把握のための指標、微化石としてプラントーオパールや珪藻、火山灰、樹木の年輪、いわゆる化石をやはり取り上げる(今のところ学校という範疇では限界)。
分析となると安全性の確保と設備(理科室など)・機器、薬品などで、教師が分析し作業過程や成果を動画/画像記録に保存し、いわゆるICT(PC、プロジェクター、液晶テレビ等)で授業時間中に、取り扱う学習項目を設定し、そこに位置づけ、取り扱い、演示し、またはデモンストレーション(いわゆるプレゼンテーション)するしかないのが現状のようである。
_丸4_「微化石分析からみた古環境復元と、今いわれる地球温暖化の流れへ迫るための教材化の在り方の一例」
古環境復原指標になる微化石には、珪藻とイネのプラントオパールが使える。微化石を検鏡・同定することは生徒にきっと新鮮で深い感動を与え、科学の世界へと導いてくれよう。作業提示、実演・演示過程をどう設定することで、試料採取と試料分析をうまく結合し、高校生の関心・意欲・態度を高めてゆく教材となってゆくのか。
他の研究方法等も積極的に取り入れた総合的な観点から、十分に高校生の学習成果が試行錯誤できるものとなることが大切である。高校生が学習結果を自ら展望・展開できる授業設計が目指せることが教材化の最終的な課題である。
_丸5_地域調査学習項目の位置の再考とまとめ
新学習指導要領では、言語活動、日本の項目、地域設定とそこにみられる諸事象を通じ問題点を把握し課題解決のための道筋をさぐるために、レポートを活かす地域調査の設定などが目指される。学校現場では授業の流れの中では、教科書記載モデルで終わらせ、独自には以前はあまり実施されてはいないといわれた「地域調査」を生きるための学力づくりにと提起している。
主体的な「地域学習」は、ここ数年は各都道府県の高等学校ごとに現行の学習指導要領下でもシラバスが作製され教科書の配列にもとづき授業展開の中で、「地域学習」が学ばれているようである。「地域調査」が毎年の「大学入試センター試験」でこのところ必須の出題分野的であることが背景となっている。効果的には、高校「地理A・B」学習への影響点は大きいと言える。活かされた「地域調査」ができるかどうかの課題がここに有るといえよう。