日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 711
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二つ玉低気圧に対する日本列島の影響
*日下 博幸北畑 明華
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抄録

1.はじめに 二つ玉低気圧とは,低気圧が日本列島の南北に対になって現れるものを言い,日本においては重要な気圧配置型のひとつである.飯田(2005)は,二つ玉低気圧が形成されるときの気圧配置として4つのパターンを紹介している.しかしながら,二つ玉低気圧に関する研究は少なく,二つ玉低気圧の出現頻度や,どういったパターンが多いのかといった調査は行われていない. 2.目的  二つ玉低気圧の気候学的調査を行うことを目的とする.過去20年間(1989年~2008年)の二つ玉低気圧の出現頻度を調べ,飯田(2005)で紹介されているパターンを参考に4つの分類型を設けて事例を分類し,それぞれの型の特徴を調査する. 3.使用データ・解析手法  はじめに,二つ玉低気圧の定義(地上天気図において,日本列島を挟んで低気圧が2つ解析されていること)を設け,二つ玉低気圧事例を抽出する.その中でも,予報官のイメージに近いと思われる顕著な二つ玉低気圧事例を選別し,それらを以下の4つに分類する.(_I_)並進タイプ:2つの低気圧が西方で発生し,日本列島を挟みながら東進する.(_II_)南岸低気圧メインタイプ:南岸低気圧が東進してきたときに,日本海上でもうひとつ低気圧が発生する.(_III_)日本海低気圧メインタイプ:日本海低気圧が東進してきたときに,太平洋側でもうひとつ低気圧が発生する.(_IV_)分裂したように見えるタイプ:ひとつの低気圧が九州付近で2つに分裂したように見える.これら4つの分類型は,それぞれ飯田(2005)の4つのパターンに対応する. 事例の分類後,各分類型毎に季節別出現頻度や低気圧の発生位置等を調査する.また,二つ玉低気圧の形成に対する日本列島の地形の影響を調べるため,各分類型からいくつか事例を選び,数値実験(日本列島除去実験)を行う. 4.結果と考察  並進タイプは春に多く出現する.ジェットの季節進行と関連している可能性がある.南岸低気圧メインタイプは冬にやや多く出現する.このタイプの場合,日本海上に発生する低気圧は,前線を伴わない弱い低気圧の場合が多い.南岸低気圧メインタイプは,季節性に特徴は見られないものの,太平洋側で発生する低気圧は,関東沖と九州・四国沖で多く発生する(図1).  数値実験の結果,並進タイプは実験の対象とした10事例全てで二つ玉低気圧の形成が確認できたが,南岸低気圧メインタイプと日本海低気圧メインタイプでは二つ玉低気圧が形成されない場合が2,3事例あった(図2).これらは,二つ玉低気圧の形成に対して地形の影響があることを示唆するものである.  数値実験を行った日本海低気圧メインタイプの1事例については,さらに詳細に解析を行った.その結果,四国沖で発生した小低気圧が,後に,潜熱解放で発達しながら,日本海低気圧の上空にあったトラフと結合して総観規模の低気圧にさらに発達していく様子が見られた.

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