日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 821
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インド洋モルディブ諸島・北マーレ環礁南縁の堆積構造と完新世の形成過程
*菅 浩伸横山 祐典鈴木 淳中島 洋典マホムド リヤズ
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抄録
1.はじめに

 環礁における現成サンゴ礁の堆積構造と形成過程が示される例は少ない。本研究では,モルディブ諸島北マーレ環礁南縁に位置するマーレ島でボーリングコアを採取し,環礁縁を横断する断面での堆積構造と完新世の礁形成過程を提示する。

2.マーレ環礁のサンゴ礁堆積物試料

(1)環礁外縁部における掘削試料の採取
 モルディブ共和国の首都マーレの中心を成すマーレ島は北マーレ環礁の外縁(南端)を構成するリーフの上に載るサンゴ洲島である。当初1.08 km2程度であったマーレ島の面積は,埋め立てによって1.97km2まで拡大した。1969年撮影の空中写真でみられる海岸は1890年代の海図に記された海岸線とほぼ同じであり,島の南側には浅礁湖~礁嶺がみられる。現在,南部の浅礁湖はほぼ埋め立てられ,南縁の旧礁嶺部に港が掘り込まれている。埋め立てによる海岸線は,島北部および南~南西部につくられた港以外の地域でサンゴ礁外縁付近まで達する。本研究では,マーレ島で外洋側礁縁部付近に達した南東部の埋め立て地で,旧礁嶺部にあたる地点をボーリング地点として選定し,掘削深度53.5mに達する環礁外縁部のコアを得た。

(2)礁湖側端部および洲島の堆積物試料
 マーレ島北東部の礁湖側斜面では2002年に発生した地盤崩壊によって,礁面(水深3m)~水深25mまでの礁湖側斜面の内部構造が確認できる。本研究ではこの崩壊地の壁面にて観察した堆積構造および採取した試料を用いて,礁湖側端部の形成を論じる。また,洲島部については現地政府による他の試錘結果を用いて議論する。

3. 環礁縁における堆積構造

 岩相記載およびX線回折による鉱物の同定より,環礁外縁部(MMC: Maldive Malé Core-site)における更新統/完新統境界は,現平均海面下9.5m付近に認められる。洲島中央部のコア(BH-1)においても現平均海面下10m付近より下位は更新世石灰岩となる。一方,礁湖側崩壊地では観察できた水深25mまでは全て完新統であった。礁湖側埋め立て地で掘削されたコアBH-2では掘削深度35m(平均海面下34m) 付近で褐色の古土壌が検出された。マーレ環礁南縁の完新世サンゴ礁の基盤地形は,環礁縁で高く礁湖側で低いことが明らかになった。
 環礁外縁部のコア(MMC)では40mを超える更新統を観察することができた。岩相より4つのリーフユニットが判別できた。各リーフユニットではcoral framestoneを挟む礁性砂礫上に,サンゴ・石灰藻(サンゴモ)より成るcoral-algal bindstoneが載る。
 完新統の堆積構造では,環礁外縁部のコア(MMC)上部の,礁原面以下3.3mで固結したcoral-algal bindstoneがみられ,以下は礁性砂礫が主となる。環礁外縁部以外の堆積構造は礁性砂礫が主であり,固結した堆積構造は認められない。マーレ島北東部の崩壊地での観察より,礁湖側斜面の表面から約2mの厚さで固結した礁構造が認められるのみである。本研究で得られた試料のAMS年代測定より,マーレ島が載る北マーレ環礁南縁における約8ka以降の礁形成過程が明らかになった。
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