日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1404
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周辺環境からみた公共ホールの立地特性
*曽我 俊生
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抄録

1 施設と周辺環境に関する研究
 人間の場所に対する認知や行動は,周辺環境つまりその空間に存在する他の要素に影響をうける.船越ほか(1988)は参道空間を構成する要素や要素相互の関係を分析し,その結果,構成要素には参道空間を区切り,参道の空間的深さを演出する効果があることを明らかにした.施設の立地特性を明らかにする場合,その施設の属性データから分析を行うのが一般的であるが,本研究では先行研究の視点をもとに,公共ホールの立地特性を「目的地への経路」にも着目しながら明らかにしていく.

2 周辺環境のとらえ方
 一般的に立地分析をする場合,対象施設の周辺を環状に区切り,その内部を分析する手法が多い.しかし公共ホールを分析対象とする場合,上記の視点に加え,最寄り駅から公共ホールまでの経路にも着目する必要がある.なぜならば,公共ホールは基本的に公共交通機関を利用しての来訪が推奨されているため,公共ホールまでの経路が施設の計画段階や利用段階において人々に大きな影響を与えているからである.ゆえに立地特性をより実態に即して明らかにする場合,経路に着目する必要がある.
 本研究では上記の理由から,公共ホールの周辺環境を「経路環境」と「近隣環境」の2点を用いて明らかにする.最寄り駅から公共ホールまでの経路にGISを用いて線バッファを生成させ,そのバッファ内を経路環境とした.また,公共ホールを中心として円バッファを生成させ,そのバッファ内を近隣環境とした.各々のバッファ内における土地利用の項目別割合を分析することで,周辺環境の特徴を明らかにする(第1図).

3 周辺環境と公共ホールの関係性
 本研究により,公共ホールの周辺環境は公共ホールと対応関係をもつことが明らかとなった.しかし,その対応関係は各公共ホールの建設年や施設規模といった「属性データ」ではなく,最寄り駅から公共ホールまでの「経路長」や「近隣施設との関係」において認められる.これは公共ホールが経営面だけではなく,設置される都市の状況など,社会的・地理的な条件に影響を受ける施設だからである.立地論だけでは展開を語ることの出来ない施設において,周辺環境に着目した分析手法をとることの有用性が明らかとなった.
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© 2011 公益社団法人 日本地理学会
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