日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 702
会議情報

発表要旨
オープンガーデンの来訪者の特徴と地域資源としての役割
*小池 拓矢
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 本研究では、東京都小平市が行政主導で行っている「こだいらオープンガーデン」に参加している1つのオープンガーデンを研究対象として、オープンガーデン来訪者の属性と地域内の行動を明らかにした。最終的に、本研究はオープンガーデンの需要供給と、他の地域資源との関係性を考察することを目的とする。「こだいらオープンガーデン」は2007年6月から開始された事業であり、小平市産業振興課内の小平市グリーンロード推進協議会など4団体が主催している。2012年現在、24か所がオープンガーデンに登録されており、小平市内全域に分布している。2012年5月17日から6月1日までの期間、対象のオープンガーデン内で、来訪者に対してアンケート調査を行い、計156件の有効回答を得た。来訪者の年齢層については、50代~70代が全体の約7割を占めており、多くが女性であったが、これは、実際に花やガーデニングを趣味とする人々がオープンガーデンに来訪しているためと思われる。また、ガーデンの情報を入手する上で、行政が発信するパンフレットやインターネット上の情報はほとんど利用されていないことが明らかになった。来訪者の居住地は、小平市内や多摩地域が多くを占めていたが、東京23区や都外からの来訪者も30組以上存在した。オープンガーデンまでの来訪手段として、自動車と電車の利用者を比較すると、前者は近隣から、後者は遠方からの来訪者が多い傾向があった。アンケート調査における、「このオープンガーデン以外に訪れた場所はあるか」という質問に対して、半数以上の来訪者は無回答であった。対象のオープンガーデンの徒歩圏内には、植物園や足湯などがあるが、これらは訪問場所として認識されておらず、来訪者は対象のオープンガーデンだけを目的地として、小平市を訪れている傾向がある。主催者である行政は、オープンガーデンを、小平市内を周遊してもらうためのスポットの1つとして位置づけており、他の地域資源間の中継地点となるような役割がオープンガーデンには期待される。しかし、本研究からは、オープンガーデンがその役割を十分に果たしていないことが明らかになった。供給の面において、行政がどのようにしてオープンガーデンや地域全体の情報を発信するかを考えることが、オープンガーデンを地域の観光に利用する上で必要である。

著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top