日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 106
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発表要旨
仮設住宅住民の身体活動量・日常生活動作能力
‐被災地再建研究グループによる研究‐
*山下 浩樹
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キーワード: Great East Japan Earthquake
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抄録
宮古市の仮設住宅住民を対象に身体活動量・日常生活動作能力調査を行った。宮古市の仮設住宅住民の身体活動量は平均値で見る限り、これまで報告されている健常成人の平均値と大きな差はないと思われる。対象者からお話を個別に伺うと、もともと活動量が低い対象者も見られたが、体力が落ちないように努力している人も多く見られ、健康に対する意識の高い人も多いという印象はあった。また、仮設住宅に入ったことにより「今までより、遠くまで買い物に行かなければならない」「きつい坂道の昇降をする必要がある」などの理由で、仮設住宅入居後、活動量が上がった人もいる。一方、同じ仮設住宅に入居しても体力的に遠くまで買い物に行くことができず結果的に身体活動量が減少した人も存在している。このように、平均的には、大きな問題はなくても個別的にみると、何らかの対応が必要と思われる人が存在している。また、今回、調査に協力いただいた対象者は、ADLは自立している人がほとんどで女性が多かった。そのため、今回は当初注目していた「避難生活が長引いて廃用症候群の危惧される人」は調査の対象になりにくいという点も明らかになった。今回は全体的な傾向はある程度把握できており、その結果をもとに今後個別的な部分にも着目して内容を深めていきたい。今後、復興公営住宅の建設にあたり、建物、立地などのハード面はもちろん重要であるが、単に住宅を建設するのではなく、行政・医療・介護などの分野で個別対応できる地域の体制づくりに力を注ぐ必要が大きいのではないかと考えられた。なお、本研究は公益財団法人トヨタ財団「2012年度研究助成プログラム東日本大震災対応『特定課題』政策提言助成」の対象プロジェクト「復興公営住宅の住まいづくりとそれを取り巻くまちづくりへの提言(D12-EA-1017,代表者 岩船昌起)」の一部である。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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