日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 402
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発表要旨
合併後の市町村における周辺部の過疎化の検証
*畠山 輝雄
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抄録

1999年以降に全国各地で行われた平成の大合併がひと段落して6年がたち、各市町村では合併後の新たなまちづくりが始まっている。平成の大合併の全盛時には、合併のデメリットとして「周辺部の過疎化」という問題点が行政および多くの研究者から指摘されていた。しかし、これらの指摘は、感覚的な経験談からのものがほとんどであり、データに基づく実証的な研究は官見の限りない。そこで本発表では、平成の大合併に伴う市町村の周辺部の過疎化について検証する。特に、人口面からの考察を行うために、市町村合併後の旧市町村別の人口変化に注目する。合併後の人口変化を分析するために、2005年と2010年の国勢調査統計を使用し、人口変化率を算出した。ただし、2007年以降に我が国の総人口は減少に転じており、また市町村合併が多く行われた農山村部ではそれ以前より過疎化が進んでいたため、市町村合併の影響を差別化することは困難である。そこで、非合併市町村や1995-2000年・2000-2005年の2期間の平均の人口変化率と比較することで、市町村合併の影響を明確化することとした。対象市町村は、合併特例法が改正され平成の大合併が始まった1999年以降の中でも、人口変化が合併直後に生じることも想定し、国勢調査実施前後の2005年4月1日から2006年3月31日の1年間に合併した1012(合併後では320)市町村とした。なお、分析に際して、合併形態による特徴を明確化するために、合併市町村について新市町村を構成する人口の首位市町村と第2位市町村の人口比および、首位市町村の人口規模から12の地域区分に分類した。また、合併年度別、合併後の役所機能別、本庁と支所との距離別にも分析した。さらに、周辺部の過疎化の要因を探るため、年齢別集計、産業等基本集計による分析も実施した。その結果、全国的に人口減少は進んでいるものの、合併市町村において1995-2000年・2000-2005年の人口変化率の平均に対する2005-2010年の人口変化率の減少度が顕著であった。特に、首位町村の人口規模が1万人と小規模ではあるものの、それ以外の市町村規模がさらに小さく、首位町村に包括される形で合併し、合併前の役所(場)が支所化された町村の減少度が顕著であった。また、支所化された市町村の中でも、本庁から遠距離の市町村において減少度が顕著であった。

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