抄録
本発表では,ベルリンが現代において都市として「体験」した特殊な歴史的背景に注目をしつつ,占拠運動(Hausbesetzung, Squatting)の一例である文化施設タヘレス(Kunsthaus Tacheles)という特定の場所における芸術家・運営側の意図に着目し,その場所ないしは空間が,現在のベルリン市内で「対ジェントリフィケーション」という文脈においてどのような意味,役割を担っているのかを明らかにした.ベルリンにおける占拠は,第三波に分けられる.タヘレスは,その中で第二波,つまりベルリンの壁崩壊直後に,国家,権力からの「自由空間(Freiraum)」の創出の中で,東ドイツ人により開拓された芸術の為の空間である.現在,タヘレスは,運動の主体を変化させながらも,存続している.その背景には,タヘレス自体の「観光地」化と,一方で市内において加速する再開発・ジェントリフィケーション等の資本主導の都市構造変化に対する市民の抵抗である.