日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 601
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発表要旨
フィリピン,イロシンカルデラとブルサン火山の噴火史研究
*奥野 充MIRABUENO HannahLAGUERTA EdgardoDELOS REYES PerlaBORNAS Mariton高島 勲鳥井 真之檀原 徹小林 哲夫
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抄録
イロシンカルデラは,フィリピン・ルソン島南東端に位置しており,カルデラの周囲には,イロシン火砕流堆積物(60 km3 DRE)が分布している(図1),炭化木片の14C年代から,約41 cal kBPの噴火年代が得られ,この火砕流のco-ignimbrite ashが,マヨン火山西麓のイナスカンスコリア丘で発見された.また,イロシンカルデラの後カルデラ火山であるブルサン火山は,現在でも噴火活動を続けている.演者らは,福岡大,鹿児島大,Philippine Institute of Volcanology and Seismology(PHIVOLCS)の3者間で共同研究に関するMOUを締結し,科研費基盤研究 (B)(課題番号:21401005)を受けて現地調査およびボーリング掘削を行った.その結果,イロシンカルデラを形成した火砕流噴火およびブルサン火山の噴火史について多くの知見を得た.本講演では,これらの結果の概要を報告する.イロシン火砕流堆積物は,2つのユニットに区分される.火砕流に先行する準プリニー式降下軽石も認められ,その下位には先駆的な噴火によるガラス質火山灰がある(Kobayashi et al., 投稿中,地学雑).この火砕流や関連する降下火山灰について,32~47kaの熱ルミネッセンス(TL)年代も得られている.これらの一連の火砕物は,カミングトン閃石を含む.火山ガラスのSiO2は約77%である.これらの特徴は今後の広域対比に有効であり,時間指標層として役に立つであろう.ブルサン火山は,カルデラ形成後に誕生したと考えられる.カルデラ底(BH-2)でコア深度約50mまでのコア試料を得た.これらは,ほとんどがラハール堆積物からなるが,流紋岩質火山灰が8枚,安山岩質火山灰が1枚,認められた.これらの給源火口は不明である.今後は,イロシンの火山灰を鍵として,タールやピナツボ火山などのテフラも検討し,ルソン島での広域テフラのネットワークを確立したい.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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