日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 701
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発表要旨
琵琶湖内での姉川起源密度流の挙動
*長谷川 直子
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抄録
1. はじめに 姉川は特別豪雪地帯の余呉町を流域とするため、冬季の積雪涵養量が多い河川である。冬季の姉川流域の融雪洪水起源の密度流は、琵琶湖の深層に酸素を供給する可能性が従来から指摘されてきた(伏見2001、新井2000)。しかし、1,2月には河川水温が湖水温よりも低いものの、密度流の観測事例はほとんどない。 そこで本研究では姉川河口と琵琶湖姉川流入域に冬季を通して自記式の測器を設置し、河川起源の流入水が冬季の琵琶湖内でどのように挙動し、また深層密度流となっているのか否かを明らかにすることとする。
 2. 方法 本研究では1冬通した姉川起源密度流の発生状況を捉えるため、姉川河口付近琵琶湖45~55m深で係留系と自記式の測器(水温、流速など)を用いた連続観測を行った。地点は図1に示す。また河川のデータ(流量、水温など)も使用した。
   3. 結果・考察 河口正面(A3)地点における、水温鉛直プロファイルの時系列変動を図2に示す。ここで、湖底付近に低温の水が、数日間にわたって見られていることがわかる。また、2008年2月15日の12時、係留地点においてCTDプロファイラーを用いた表層から深層までの鉛直プロファイル計測を行った。そのうち電気伝導度、及び水温と溶存酸素濃度の結果をそれぞれ図3に示す。ここからわかるように、深層約5mの厚さで、水温が低く溶存酸素濃度が高い層が見られる。またこの層では電気伝導度がどの層よりも低くなっていた。つまりこの湖底上5mに亘る水は、表層の冷たい水や沿岸で冷やされた湖水が沈み込んだものではなく、別起源の水であることが示唆される。姉川は流域に石灰岩地域を含むが降水・融雪時には河川水の電気伝導度が下がり、値は変動する。CTD観測を行った2月15日前後の姉川河口近傍(野寺橋)における電気伝導度(日平均値)の変動結果によると、湖水の電気伝導度が83.5mS/mであるのに対して、2月12日後半から2月18日にかけては湖水より低い値で変動していることがわかる。 以上のことから、ここで見られた深層水は姉川起源の密度流である可能性が高いと考えられる。
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