抄録
関東地方の冬季の強風は,「空っ風」,「筑波おろし」,「赤城おろし」などの様々な名前が付けられおり,関東各地で局地的な強風の被害をもたらしてきた.
近年の研究では,日照時間と風速の日変化との関係から,日照時間が長くなることで混合層が高く発達し,上空の運動量を地表面に多く輸送するため強風が発生すると結論づけている(蓬田、力石2004).それに対して,Kusaka et al.(2011)は,統計解析と1次元大気境界層モデルを用いた感度実験を行った.その結果から,日射よりも上空の季節風の風速のほうが,地表面での強風への影響が大きいということを示している.しかしながら,これらの研究では大気を1次元的に考えているため,地形の影響を考慮していない.そのため本研究では,地形を考慮した2次元局地気象モデルを開発することで,感度実験を行い空っ風のメカニズムを解明することを目的とする.本研究で開発する局地気象モデルの基礎方程式系は,非弾性近似方程式系を採用した.座標系は一般曲線座標系を採用し,格子系は反変速度を格子境界に定義するコロケート格子を採用した.数値計算アルゴリズムはSMAC法,時間差分スキームは移流項に省メモリー型3次精度ルンゲクッタ法,その他の項には前進差分を用いた.空間差分スキームは2次精度中央差分法を用いた.圧力に関するPoisson方程式の解法には,逐次過緩和法(SOR法)を用いた.構築した力学モデル,座標変換,境界条件の検証を行うために山岳波の再現実験を行った.山岳波の実験は,Satomura et al. (2003)の設定で行った.その結果,山岳波の位相と波長はよく再現できた.しかしながら,高さに伴う振幅の増大の程度が小さい点,地表面付近で波に乱れがある点から、境界条件の改良が必要である.