理学療法学Supplement
Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PI1-183
会議情報

ポスター発表(一般)
急性期~回復期脳卒中患者のFIMによる運動FIM50点未満のADL帰結の予測
竹原 康浩寺坂 晋作小林 恵美杉本 朱美西村 仁余高畑 友宏野路 広樹鈴木 香苗池戸 佳代美青竹 康雄
著者情報
キーワード: 脳卒中, FIM, 予測
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】当院は急性期病院として,急性期脳卒中患者を対象としたリハビリテーション(以下,リハビリ)に取り組んでおり早期の自宅復帰を目指している.しかし,リハビリが長期必要な重症例などの場合,患者が地域に戻り早期に社会復帰するには,連携医療機関との脳卒中地域医療連携パスによる円滑な連携強化が必要となってくる.よって,連携医療機関とADL帰結を予測できる共通した簡便な指標を活用していくことは有用である.そこで,今回,ADL帰結を回復期病棟退院時運動FIM50点未満とし,急性期~回復期の脳卒中患者におけるADL帰結の予測を目的に,脳卒中発症2,8週でFIM運動項目合計点(以下,運動FIM),FIM認知項目合計点(以下,認知FIM),FIM総得点(以下,FIM合計)に対し予測因子の有効性を検討した.

【方法】対象は2008年1月から当院に入院,リハビリを実施した脳卒中患者のうち,連携医療機関の回復期病棟に転院後,2010年3月までに退院し,当院~回復期病棟までの入院期間(以下,総治療期間)が8週以上であった102例とした(くも膜下出血,死亡,入院期間での再発,リハ中止例は除外).予測事項であるADL帰結は,A群:回復期病棟退院時の運動FIM 50点以上,B群:回復期病棟退院時運動FIM 50点未満とし,この2群のいずれかで判定した.対象の内訳は,A群63例(脳梗塞51名,脳出血12名),B群39例(脳梗塞21名,脳出血18名)であった.予測因子の有効性の検証は,B群に対してのみとし,感度,偽陽性率,陽性反応的中度,受診者動作特性曲線を用いて検証した.

【説明と同意】脳卒中地域医療連携パス使用にあたり説明と同意を得た.

【結果】A群は年齢74.1±10.7歳,平均在院日数33±11日,平均総治療期間114±36日,自宅復帰率92.1%,歩行可能率100%,B群は年齢79.6±9.5歳,平均在院日数42.1±17日,平均総治療期間152±41日,自宅復帰率48.7%,歩行可能率5.5%であった.受診者動作特性曲線により,B群に対して精度が優れていたのは運動FIM,FIM合計,認知FIMの順であった.運動FIMの予測の有効性は,2週では,カットオフポイントが23点以下で,陽性反応的中度89.7%,感度90%,偽陽性率6%,8週では,カットオフポイントが37点以下で,陽性反応的中度97.3%,感度92%,偽陽性率2%であった.

【考察】今回,急性期から回復期脳卒中患者において,回復期病棟退院時の運動FIM50未満をADL帰結とした場合,予測因子として精度が優れていたのは運動FIMであった.よって,「運動FIMが発症2週で23点以下,もしくは,発症8週で37点以下であると,歩いての自宅復帰が困難である可能性が大きい」といった予測が可能と考えられた.また,発症2週でも8週同様の予測が可能であることが示された.しかし,他の因子などの影響を考慮することでより精度の高い予測が可能になるなどの報告がある.今後,脳卒中地域医療連携パスを構築していくための共通した指標の一つとして有効と考えられるが,さらなる検討が必要である.発症早期からの運動FIMによる予測は,治療方針の決定や患者への説明,連携パスの運用などに対して,簡便な指標の一つとして有用と考えられる.

【理学療法学研究としての意義】急性期初期の段階から簡便な指標を用いてADL帰結を予測することは,急性期だけでなく,回復期,さらに維持期の理学療法プログラムを作成する上で重要であり,他施設間,他職種間の連携という点においても有用と考える.
著者関連情報
© 2011 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top