日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 620
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発表要旨
新潟・長野県境付近における偽高山帯の成立条件
*山縣 耕太郎島村 信幸
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抄録
新潟・長野県境付近は,国内有数の多雪地域であり,狭い範囲の中に,針葉樹林が存在する山岳と,偽高山帯がある山岳が存在している.また,針葉樹林が存在する山岳も,その多くが断片的な針葉樹林の分布を示す.すなわち,この地域の山岳には,亜高山帯針葉樹林の存否を分ける境界条件が存在しているものと考えられる.このような地域においてオオシラビソ林分布の規定要因を明らかにすることは,偽高山帯の成立条件を明らかにするうえで重要な手がかりを与えるものと考えられる.そこで,新潟・長野県境付近を対象地域として,オオシラビソ林の分布と気候,地形,土壌,地史などの環境条件との関係を明らかにし,偽高山帯の成立条件について検討を行った.その結果以下のことが明らかになった.調査地域においてオオシラビソ林は,標高1700~2100mの亜高山帯の多雪な気候条件の範囲で成立している.また,その範囲の中でもオオシラビソ林が成立しているのは,以下のような条件の地点である:1)長期間地表面が安定して厚い土壌層が生成されている地点,2)積雪による機械的な破壊の程度が低い緩傾斜地,3)尾根・稜線では,風衝の度合いが比較的低いところ,4)山腹の緩斜面では,積雪期間が相対的に短い凸状の地形上.また,山頂高度が2000m以下の山岳や,活火山上ではオオシラビソ林が認められないことから,いったん山体からオオシラビソ林が消失すると,長期間かけてもオオシラビソ林が再び成立するのは難しいものと考えられる.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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