抄録
イラワジ川は、ミャンマー中央部を南北に貫く総延長距離2010kmの巨大河川である。水源はヒマラヤ山脈東縁部にあり、イラワジ川の流量は氷河の雪解け水を基底水量としているが、モンスーンの降雨を合わせて乾季と雨季で大きく変化を見せている。イラワジデルタの最下流部では河口部から上流289.9km地点のミャウンを頂点として、面積31,080km2のイラワジデルタを形成している。
デルタの氾濫平野は、おおよそ海抜5m以下であり、自然堤防、砂州などの微地形の起伏が乏しく、モノトーンな地形景観を見せている。この区間のイラワジデルタにおける河川勾配は、1/49,000と極めて小さく低平である。イラワジデルタの河川は、分流を繰り返し、小水路をデルタ全域に広げている。イラワジ川の河口部には、デルタの前進があるものの、分流路に当たるパテイン川の河口部には、エスチュアリ―を形成している。この河川は、内陸部まで潮汐の影響を受けており汽水域が広がっている。
古い研究ではあるが、Chhiber(1934)によれば、イラワジデルタは約30万年前には河口より375.2km上流にあるピイ近辺に河口を認めているが、このデルタの環境変動、また完新世のデルタ発達史は不明である。2009年以降、科学研究費を用いて現地での地形調査を行うとともに、現地ではSUNTEC(株)に依頼して、ヤンドン地点、パテイン地点、ヘンサダ地点に置いて3本のボーリング調査を行った。この報告では、この試掘のうち、イラワジデルタ西側のパテイン地点に置いて行ったボーリング調査の結果を報告する。