主催: 公益社団法人 日本地理学会
シンポジウム趣旨 2009年3月,日本地理学会ジオパーク対応委員会では,「大地の遺産100選」選定事業を行うことを決めた.大地の遺産とはジオサイト・ジオヘリテージと同義であり,ジオパーク内には,多くの大地の遺産が存在するのが通例である.従って,大地の遺産はジオパークの潜在的候補地となるものである.大地の遺産の選定をすすめることにより,各地域における地理学的,地学的資源の保全,教育,地域振興の活動のきっかけを与えることになる.今回のシンポジウムでは,その理念や,選定方法について,具体例をもとに議論を深め,選定作業を加速させるきっかけをつくる.そのための材料として,それぞれの立場で大地の遺産を選んでみる.大地の遺産の例:根釧原野の場合 大地の遺産の考え方をよりよく理解していただくために,根釧原野の大地の遺産について例示する.山岳の例を示せと言う要望であったが,根釧原野(根釧台地)は,日本でもっとも山に似た環境の低地と洪積台地なので例として選んだ.「西別川源流の湧水(サケ孵化場)」 「毛根別の沖積火山灰の砂丘」 「蛇行河川(西別川・当別川など)」 「非対称谷(当別川・ケネカ川など)」 「火山灰とソリフラクションの露頭」 これらの地形や堆積物は氷期の環境を示す重要な現象であるが,地形学・第四紀学研究者をのぞいて地元でも知られておらず,その整備や復元は研究・教育に大きく貢献する. 「野付半島とトドワラ」 野付半島ネイチャーセンターがあり,エコツーリズムが行われている.古い漁村の遺跡もある. 「北開陽の農村景観(牧場と防風林)」 「別海中央の旧パイロットファーム(酪農地帯)」 根釧原野には日本の農業政策の試行錯誤の軌跡が残されている. これらをつなぎ合わせて道東の自然と人間との関わりを見せる魅力的なジオパークができそうである.