日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 813
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発表要旨
『京都市明細図』を用いた占領期京都研究の可能性
*赤石 直美瀬戸 寿一矢野 桂司西川 祐子福島 幸宏
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抄録
 本発表の目的は,「京都市明細図」の記載内容を,第2次世界大戦後の占領期京都に関する行政文書から検討することである.本発表で取り上げる『京都市明細図』は1927(昭和2)年に発行された後,1951(昭和26)年まで加筆されたものである.彩色や建物を利用する企業名など,書き込みの多くは1945(昭和20)年以降のものと考えられる.すなわち,明細図は戦前と戦後という社会情勢の大きく異なる時期を含んでおり,それを踏まえた分析が求められる.特に1945~1952年は日本の占領期に相当し,占領期の京都の諸状況を知っておかねばならない.そこで,本発表では『京都市明細図』の記載内容を,占領期京都研究における成果を踏まえて検討する.京都府立総合資料館には占領期京都に関するいくつかの行政文書が保存されている.進駐軍の接収建物に関するものと,進駐軍が起こした事故に関するものはその一部である.進駐軍駐留のため,京都市内のいくつかの建物が接収された.それらの建物のうち,本研究では進駐軍の事務関係の建物を接収施設,軍人とその家族の日常的な住まいのための建物を接収住宅と称する.それらの分布について,先行研究の地図の精度を高め,また明細図との比較を容易にするため,接収施設,接収住宅の位置情報を基に建物毎にベクタデータを作成した.またGoogle Erath上でも表示・検索できるようにした.Google Erath上で,接収施設・接収住宅ならびに進駐軍関係の事故の分布と『京都市明細図』,さらに現在の京都市を比較したところ,京都市明細図に記載されたローマ字や,「進駐軍洗濯場」等の記載が何を意味するのか理解された.また元々どのような用途の建物が接収されたのかも知ることができた.そして,進駐軍の関った建物が,現在の利用についても言及することが可能となった.詳細については発表時に報告したい.『京都市明細図』は,戦前から占領期にかけての時期に関する情報を有しており,それを踏まえた検討が必要である.GISデータベースを構築することは,時代を区別しつつ円滑な分析を行うための有効な手段である.当時の状況を含むGISデータベース(『京都市火災保険特殊地図』・近代化遺産GISデータベース等)や当時の電話帳の情報を重ねることで,『京都市明細図』の記載内容はもとより,近代,そして占領期京都研究の進展につながると考える.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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