日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1202
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発表要旨
中国内モンゴル草原における衛星データから得られた植生指標の変動とその要因について
*咏 梅
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抄録
 
1.  はじめに内モンゴル草原は、半乾燥地域から半湿潤地域に位置し、自然草地資源として、中国北部の重要な牧畜生産基地となっている。しかし、近年温暖化と人為撹乱などの影響により、草地退行が進行し、沙漠化が問題になっている。一方、近年内モンゴル沙漠・沙塵暴防止などの努力の結果、地域によって植生の緑化に成功しているとも言われている。しかし、多くの研究では特定の2つの時点の比較から沙漠化の進展を議論しており、 全体的な変化傾向を必ずしもとらえていないと思われる。また、沙漠化の進展や回復の要因については人為的影響が大きいと論じている研究が多く、気候変動など自然的要因から論じた研究は少ない。2.  研究方法およびデータ本研究では、近年沙漠化の進展が著しいと言われ、北京・天津で急増した砂塵暴の発生源として注目を集めているシリンゴル草原の渾善达克沙地に注目し、詳細な解析を行った。まず1981年から2010年までのAVHRR/GIMMSとMODIS/TERRAの衛星データを使用し、生育期間の植生量を算出した。植生量の指標として年最大NDVI値と4月~10月積算NDVI値を用い、年々変動および長期変動の時空間変化を調べた。次に、渾善达克沙地内11観測点の気温と降水量のデータを用い、NDVI値に及ぼす影響を調べた。最後に、家畜頭数変化、植林、土地利用変化などの人為的影響がNDVI値に与える影響を検討した。3.  結果シリンゴル草原における渾善达克沙地では、対象期間30年全体を通してみると、植生指標には、明瞭な増減傾向は見られなかったが、2003年以降でみると減少傾向がみられた。降水量と気温の両方を用いて重回帰分析した結果、NDVI実測値と予測値との重相関係数Rは積算値で0.83、8月値で0.91と非常に高かった。すなわち、先行研究や各種メディアで喧伝されるほど、過放牧や過耕作等の人為的影響が沙漠化の主たる要因であるとはいえない。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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