抄録
サンゴ礁に対する関心は近年非常に高まってきている。それは、生物多様性保全上の価値、それに裏打ちされる観光や水産業等産業上の価値、あるいは人間の生活とのかかわりで認識される文化・歴史・社会上の価値が広く認識されるようになってきたためである。 しかし、そのサンゴ礁の価値については、サンゴ礁生態系の生物群集部分に対する評価にとどまっていることが多い。サンゴ礁生態系は、サンゴ礁上での地形・堆積物-波・流れ-生物を中心とした関係性によって成立している。サンゴ礁の利用と保護のためには生物的自然への理解だけではなく地学的自然およびそれらと人間のかかわりへの関心と理解が不可欠である。そのことは、2009年秋季学術大会(沖縄)でも述べたとおりジオパークという発想とその展開によって、この課題をクリアするきっかけとなる可能性がある。 本発表では、以上のような認識に立ち、「大地の遺産」、ひいてはジオパークとして日本のサンゴ礁を選出する場合の注目点を提示したい。