抄録
2011年3月11日東北地方太平洋沖地震の直後に撮影された空中写真は,沿岸部の広大かつ甚大な津波被害をはっきりと把えている.
早期の徹底的な救援・復旧活動のため,本チームは,地震後撮影の空中写真の実体視判読をただちに開始し,地震後17日目の同28日,津波浸水域と激甚被害域を示した縮尺1:25,000「津波被災マップ」を災害対応本部のウェブサイトにて公開した.津波浸水域の認定は,地震後撮影の空中写真の実体視判読を,微地形や標高,地形発達史,土地利用,土地条件,また人工構造物などを直接確認しつつ津波の流動コースを考慮して実施することで,概ね可能である.画面上で空中写真データを拡大しての実体視判読も重要である.地震前に撮影された空中写真との比較も浸水域認定に役立つ.
こうした手法により,広大な浸水域を迅速に認定することができる.しかしこれまで,このことはほとんど明示されてこなかった.本稿では今回の「津波被災マップ」をもとに,浸水域認定の根拠と注意点,問題点を述べる.作成の経緯やマップの具体例は本チームによる他の2発表(本大会)を参照されたい.