日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P1119
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発表要旨
伊勢平野中部における完新世後半の海岸低地の形成過程
*河角 龍典小野 映介
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抄録
  伊勢平野中部に位置する中小河川流域には,小規模な沖積低地が発達している.しかし、伊勢平野中部に位置する中小河川の下流域平野やそれらの河川間に発達している海岸低地の沖積層の層序や地形形成過程については不明な点が多い.そこで本研究では,三重県津市の田中川と志登茂川間の海岸低地を主要な研究対象地域として,海岸低地の沖積層の層序や完新世後半の地形形成過程について検討する. 研究対象地域の田中川-志登茂川間の海岸低地の幅は,0.9km~2.0kmであり,丘陵と海岸線の間には,4列の砂堆列が分布している.本研究では,最も内陸側の砂堆列を砂堆Ⅰと呼称し,海岸面している砂堆列を砂堆Ⅳとした. 津市河芸町付近の海岸低地の形成過程を把握するために,主に砂堆Ⅰ(T.P.2.9m)と砂堆Ⅱ(T.P.1.8m)の間に位置している堤間湿地(T.P.0.9-1.2m)において,ハンドオーガー及びハンディジオスライサーによる地層掘削調査を実施した.その結果,海岸に直交する幅約200m区間の地質断面を把握することができた. 大きく3つのユニットに区分できる.ユニットⅠ(T.P.1.0-1.2m)は,現耕土およびその下部のシルト層から構成される.このユニットは丘陵の開析谷を水源とする小河川からの土砂供給により形成されたものと考えられる.このユニットの自体の14C年代は得られていないが,下位のユニットⅡの最新の年代から古墳時代以降に形成された堆積物であると考えられる.ユニットⅡは,堤間湿地を埋積している堆積物で,主に泥炭や有機質シルトから構成される.このユニットでは,1670±30 BP,2260±30 BP,2510±30,2640±30 BPの14C年代が得られている.ユニットの最下部の堆積物を採取することができていないが,下位のユニットⅢの砂礫層内の木片の14C年代が,3120±30 BPの値を示すことから,ユニットⅡの形成年代は,この時期以降となる.少なくとも2640±30 BP~2260±30 BPの間は,堤間湿地は地形変化がほとんどない安定した地形環境であった.また,本ユニットの上部では,1670±30 BPの年代値が得られる有機質シルトの上層と下層に,砂層または砂礫層からなるいイベント堆積物を確認することができた. 最下位のユニットⅢは,主に砂層や砂礫層から構成される.ボーリング資料の上部砂層や砂堆構成層に連続する堆積物であると考えられる.前述したようにこのユニットの砂礫層内の木片の14C年代は3120±30 BPの値を示し,砂堆Ⅱと関連する砂州の形成がこれ以降に開始したと考えられる.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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