日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P007
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発表要旨
奈良盆地と京都盆地における瀬戸内気候としての乾湿の違い
*丸本 美紀
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抄録
1. はじめに
榧根(1989)によると、「気候は『寒暖』と『乾湿』によって表現できる」としている。奈良盆地と京都盆地はKÖPPENの世界の気候区分によると同じ温暖湿潤気候区に属し、日本の気候区分でも同じ瀬戸内気候区の東端に属している。また、地形においても両地域は盆地であるため、盆地気候を有していることも同じである。その上、両地域は隣接しており、その間は標高120mほどの丘陵で区切られているにすぎない。しかし、古代より奈良盆地では「干ばつ」が多発し多くの溜池が築造され、一方、京都盆地では夏の蒸し暑さや大雨・洪水というかなり異なった気候特性を持っている。そこで本研究では、両地域における気候特性、特に乾湿に注目し、奈良盆地と京都盆地の気候の乾湿がどのように異なるのか、気候学的水収支の解析を行った。
2. 研究方法
一般に、「ある土地における気候」を表現するものとして、気温と降水量の平年値から作成した雨温図やハイサーグラフなどが使用される。しかし、各気候要素の季節変動が、毎年平均値と同じような変動をするとは限らない。また平均値では災害となりやすい高温と低温、あるいは大雨と少雨が相殺されてしまう恐れがある。そのため本研究では、奈良地方気象台と京都地方気象台における1954年~2012年の日最高気温月平均値と月降水量を用い、平年値と毎年の年候的ハイサーグラフを作成し、比較を行った。また気候学的水収支は、Rf =P-E    (Rf:流出量、P:降水量、E:蒸発量)で示される。本研究では、Thornthwaite法を用いて、 奈良と京都における最大可能蒸発散量と実蒸発量、水分余剰量、水分不足量を求め、両地域の年候的比較を行った。データはハイサーグラフと同じ奈良地方気象台と京都地方気象台の1954年~2012年の月平均気温と月降水量を使用した。
3. 解析結果
ハイサーグラフの平年値と毎年のグラフからは、平年値と同じような気候がほとんど出現しないことが分かった。また奈良と京都の比較では、おおよそ毎年冬季の気候が同じであるのに対して、夏季の気候、特に降水量が異なるということが分かった。Thornthwaiteによる蒸発散量の解析では、年間の水分余剰量はほぼ奈良よりも京都の方が多く、これが両地域における乾湿の差に反映していると思われる。このような乾湿の差は、両地域における瀬戸内気候の影響の違いと考えられる。今後は、両地域の気候において、さらに影響を及ぼしていると思われる盆地気候がどのように異なるのか、気温の年較差・日較差から解析を行う予定である
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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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