日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 403
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発表要旨
2012年九州北部豪雨災害からの復興と着地型観光
*深見 聡
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抄録

1.はじめに
観光の現場において、近年注目されているのが着地型観光である。また、その事例として、平常時の地域づくりへの波及を意識したものに加え、災害復興の過程において展開されるケースも増えつつある。東日本大震災後に、ボランティア活動や支援、交流の機会の創出といったさまざまな取り組みは、災害復興において観光が1つの役割を担うことを裏づける(井出,2012)。今回取り上げる星野村は、2012年7月の九州北部豪雨で大きな被害を受けた。星野村は、近年人口流出に加え、高齢者の割合が高まる典型的な過疎・高齢化地域である。加えて今回の水害の影響で人口流出が加速しつつある。このような現状を踏まえ、災害復興を果たしていくには、地域が主体となり交流人口の確保を目指す着地型観光が適しているのではないかと考えられる。また、今回の災害を契機に、着地型観光の定着と発展につながり、さらには、それが観光による災害復興へとつながる循環の構築が期待される。『観光立国推進基本計画』(2012年3月閣議決定)においても、東日本大震災を踏まえて観光立国推進基本法の目的である「国民経済の発展」、「国際相互理解の増進」、「国民生活の安定向上」に加え、「震災からの復興」を柱として掲げた。 そこで本報告では、福岡県八女市星野村の災害復興と着地型観光を事例に、地域住民を対象にアンケート調査を実施し、意識の把握をとおして着地型観光の導入の妥当性について検討することを目的とする。  
2.アンケート調査の実施概要  
星野村の住民が村の活性化についてどのような意識をもっているのか、災害前後の変化に注目しながら把握していく。本アンケート調査は、2012年11月に八女市立星野小学校の5,6年生、八女市立星野中学校の1~3年生117名とその保護者84名の計201名を対象に実施した。地域活性化というテーマの場合、どの年齢層を対象とするかでおのずと得られる結果も異なってくる。ここでは、星野村の未来を長きにわたって担っていく、比較的若年層および中年層にあたる人びとを主な対象者に設定した。  
3.アンケート調査の結果
アンケート調査の結果から、約9割の星野村の住民が、星 野村に愛着を抱いていることが分かる。しかし、星野村はよい観光地であると考える住民はそれより減少し約6割にとどまった。よい観光地であると考える住民は、その理由として「自然の豊かさ」を挙げる回答が主であった。また、「平日でも他県から来ている人を見るから。」(14歳、男性、中学生)というように、訪れる観光客を目にして、星野村がよい観光地であるということに気づいたと考えられる回答は、子どもたちに多くみられた。 一方で、約2割に当たる、よい観光地であるとは思わない とする理由としては、「災害の爪痕が残る現在の状況では観光を楽しめないから。」といった内容が多く挙げられていた。その他に、「本当に何もない。災害が起きていても起きていなくても同じ。」(15、女、中学生)というように、災害発生の有無にかかわらず、星野村に対して、よいイメージを持たない人もいた。また、いかに普段から身の回りにある観光資源に気づき発信していくかが重要となる着地型観光の課題が表われている。  
4.考察
災害からの復興を目指す星野村にとって着地型観光は 有効な手法の1つである。この可能性を探る際に、アンケート調査の結果から「体験の存在」の重要性が見いだせる。星野村には、もともと着地型観光に十分な観光資源が存在していたが、実際の観光にうまく活かされていなかった面もあるだろう。それが今回の災害を契機に、星野村の将来や観光に対する住民の意識に変化がみられるなど、着地型観光の定着が図られる時機にあると考えられる。そのことは、観光をとおした災害からの復興へとつながっていくと考えられる。  
5.おわりに
本研究は、九州北部豪雨による災害が発生した星野村を対象に、復興の手法の1つとして着地型観光の可能性について星野村の住民に対するアンケート調査結果に検討を加えることを目的として進めてきた。  結果、星野村の住民が星野村を知ること、それが結果として災害からの復興につながり、ひいては地域が主役となる着地型観光の展開へとつながっていくことが明確となった。すなわち、自地域について知ることが、住民だれもがすぐに始められる着地型観光の展開に向けた第一歩となる。  
付記  本研究は、科学研究費補助金若手研究(B)(課題番号:25870520)による成果の一部である。  
文献 井出明(2012):東日本大震災における東北地域の復興と観光について-イノベーションとダークツーリズムを手がかりに-.運輸と経済,72(1),pp.24-33.

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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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