日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 535
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発表要旨
侵食地形から得られた奈良盆地南部の低位段丘構成層の堆積面レベルの復元
*木庭 元晴
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抄録
奈良盆地南部の盆地縁辺部には低位段丘面とその堆積物が分布している。その堆積原面を侵食地形から復元する。この契機になったのは火成岩からなる大和三山に見られる緩斜面や地質境界であった。下図には稜線沿いに取った三山の垂直断面図を示しているが,破線で示しているように,三山共通のレベルを海抜120m弱に見出すことができる。このレベル付近には,畝傍山では貫入岩と花崗岩の境界が,天香具山でははんれい岩と花崗岩の境界が,耳成山では流紋岩内斜面の緩斜面によって認めることができる。風化による花崗岩の侵食がこのレベルで減速したと読み替えるのである。つまり,このレベル以下が地表下にあったと考える。現在のローカルな侵食基準面は,三山が緩斜面上に位置するため,海抜60~80mと幅がある。現在より40mほど高い安定した侵食基準面を想定することになる。なお,花崗岩の真砂化は水分移動が活発な地表面付近で卓越している。花崗岩中の鉱物を構成するKやNaの溶脱も専ら地下水の飽和帯上面までである。地下水面は当然,ローカルな侵食基準面と連動しており,谷頭侵食が進行する過程でローカルな侵食基準面は進行拡大してゆく。 活断層が見られない三山の竜門山地側や金剛山地東山麓で,過去の侵食基準面の残骸を探すと,最終氷期に対応する低位段丘にあたる。現在残る低位段丘面はかなり低下しているが,海抜120m付近に低位段丘面とこれより多少低い位置に段丘礫層のそれぞれ断片を認めることができる。このような低位段丘と礫層の分布傾向は一般に認められ,少なくとも奈良盆地南部の現盆地底縁辺部の低位段丘面の高度としてほぼ120mを想定することができる。低位段丘礫層は堆積の最盛期からするとかなりの部分が亡失した。この契機になったのは,後氷期の海水準上昇であって,海進過程で内陸部の侵食基準面は急激な低下の結果と考えられる。発掘資料によれば,奈良盆地の沖積層は極めて薄く,現在の盆地面は低位段丘層の侵食地形と考えられるのである。
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