抄録
本研究では,ブラジルアマゾナス州マウエス市から,さらに自動車とモーターボートを乗り継いで1時間ほどの奥地にある,マウエス・アス川支流のププニャル河畔に立地するファゼンダ・サンタ・セシリアを事例として,住民の生活様式の特徴を,おもに自然環境との関係に着目しつつ実証的に明らかにした。 本農場の生業複合は,昨年まで続けてきたインディオ集落への行商,テラフィルメとヴァルゼアの双方に所有する牧場(それぞれ約60ha)間での移牧による120頭の牛飼育,焼畑(3ha)での自給的農業(マンジョカ,バナナ,パイナップル,カライモなど),ガラナ栽培(1ha)である。 また,母屋の周辺には家庭菜園が作られており,おもに食用となる多様なヤシ類や果樹・野菜類,堅果類,薬や香辛料に利用されるさまざまな薬用植物が認められた。有用植物は家庭菜園だけでなく,牧場内でも伐採されずに残されている。さらに,きわめて多種類の野生動物が捕獲されて,住民の貴重なタンパク源になっている。