日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 715
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発表要旨
長春市における回族地域社会の持続と変容
―中国長春フィールド調査報告(6)―
*高橋 健太郎
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抄録
 回族[Huizu]とは,中国の少数民族の一つで,その生活習慣や価値観はイスラームの強い影響を受けている。モスク(清真寺)は地域社会の核で,宗教活動のみならず日常生活全般で重要な役割を果たしている。本発表では,2012年8月のフィールドワークにもとづいて,長春市の回族地域社会の持続と変容を考察する。 長春市の回族人口は約4万人で,4つのモスクがある。そのうちの2つ,長通路モスク(1824年創建)と二道モスク(1946年創建)の周辺では,回族が集まって居住し明瞭な地域社会が存在した。しかし,2000年代の再開発により集合住宅が建設され,回族住民の分散と新住民の流入が進んでいる。回族のモスクの利用が減り,イスラーム信仰が薄れることにより,民族としての回族らしさもなくなってしまうのではないかと宗教知識人は懸念する。他方,人的交流や刊行物,インターネットなどを通して,他地域のムスリムとのネットワークが確認され,これは地域社会の持続と活性化に一定の役割を果たしていると考えられる。
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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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