抄録
17世紀以降に江戸(東京)で書かれた古記録類から得られたサクラの植物季節データを用いて、3月平均気温の復元を試みた。西暦1636年から1905年までで判明した合計207年分のヤマザクラの満開日により、17世紀中盤以降の3月平均気温の推移が明らかになった。解析の結果、17世紀後半と19世紀初頭に寒冷な時代のあることがわかった。これらの低温期は、京都における3月の気温の復元推移にも共通して現れており、太陽活動のマウンダー極小期(17世紀後半)とドルトン極小期(19世紀初頭)に対応したものである。マウンダー極小期とドルトン極小期における江戸の3月平均気温はそれぞれ、およそ4℃、5℃とみられる。