日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 216
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発表要旨
アジアの7大都市における都市の地下温度上昇
*一ノ瀬 俊明
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抄録
前報(2010年秋季大会)では、アジアの7大都市を対象に、20世紀における都市の拡大がもたらした都市の温暖化について数値シミュレーションをおこなった結果(地上気温)について報告した。本研究は、総合地球環境学研究所プロジェクト「都市の地下環境に残る人間活動の影響」(代表・谷口真人)の一部であり、当該プロジェクトでは、これら7大都市における20世紀3時点のデジタル土地被覆データセットを作成している。このデータセットを地表面境界条件として気象モデルに入力し、数値シミュレーションで得られる地表面温度の変化傾向と、過去の地表面温度を記録していると考えられる地下温度の鉛直プロファイル(Taniguchi et al., 2009)との比較を行った。各対象都市における都市の発展ステージや地下温度の鉛直プロファイルには多様性が見られるものの、通年で最も気温の高くなる季節の静穏晴天条件のみを計算した場合、いずれの都市の中心市街地においても1.1 K/Century前後の値が得られた。20世紀初頭にはいずれの対象都市においても、中心部がすでに都市化していたためである。地上気温や雨天出現率などの気象要素の通年変化(図1)は対象都市によって大きく異なるため、簡便な手法でこの影響を取り込むべく、暖候期(もしくは乾季)・寒候期(もしくは雨季)、晴天日・雨天日の組み合わせで得られる4つのケースで計算を行い、天候の出現率を重みとした加重平均値(擬似的な年平均値)を求めた(図2)。表1に計算値と観測値(Taniguchi et al., 2009)の比較を示す。結果は、バンコク(0.9 K/Century)と東京(1.9 K/Century)についての合理的な差異を示している。よって、気象要素の通年変化の多様性は、都市の地下温度上昇を決める重要な要素といえる。とりわけ、比較的高緯度の都市における寒候期の地表面温度の寄与が大きいものと思われる。
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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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