日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P039
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発表要旨
多摩川上流,三頭山北西面の大規模地すべり
*苅谷 愛彦清水 長正澤部 孝一郎目代 邦康佐藤 剛
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抄録
(1)多摩川上流・三頭山北面の玉川源流域には特異な礫層が分布する.この礫層は近傍の馬蹄形凹型急斜面を発生域とする地すべり堆積物である.体積規模から大規模地すべりにあたる.低丘(流れ山)や特有の破砕構造が発達することから,岩石なだれ・岩盤すべりとして滑動した可能性がある.(2)堆積物の分布距離(1.5 km)と比高から求めた等価摩擦係数はh/l=0.39である.(3)移動土塊は玉川を埋積し,谷底に湖沼・氾濫原を出現させた.その年代は1292-1399 cal AD以前と考えられる.(4)一方,これより有意に新しい年代を示す木片が礫層中から発見された.同地の地すべりは湖沼・氾濫原を形成した初生的なものと,移動土塊が二次すべりを生じたものの最低2回発生したと考えられる.(5)地元(山梨県小菅村)には,玉川源流の山中にあった池が決壊し,大蛇が流れ出たとの伝承がある.この伝承にある池の決壊はせき止め湖沼の破堤(または二次地すべり)を,大蛇の流出は土石流の発生を喩えた可能性がある.
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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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