日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P048
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発表要旨
静岡県水窪町に不定期に出現する「池の平」池の出現機構の解明
*髙橋 由佳矢河野 忠
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抄録

1. はじめに 静岡県浜松市水窪町の標高654mに位置する窪地にはほぼ7年周期で出現すると伝えられている湧水池がある。普段は水の無い窪地となっていて,スギやヒノキといった人工林に覆われている。湧水池が発生する直前には大量の降水が確認されている。杉森ほか(2001)によると,地質と降水が地下水面に影響し,湧水池が出現すると報告されている。また,400年以上前から出現していたと言い伝えられているが,詳しいことはわかっていない。この池は,今現在も明確な発生条件やメカニズムが解明されておらず,周期的に出現する理由も不明のままである。そこで,本研究では,降水量や現地の自然条件を基に,出現メカニズムを解明することを目的とした。今回は,主に2012年7月と12月に現地調査において湖盆測量を行った結果を報告する。2. 研究対象地域 池の平の池は水窪町奥領家にある亀ノ甲山峠を200m程下った場所の窪地にある。山道は佐久間ダム建設以来,廃道に近い状態である。山道は崩れている箇所が多くあり,山全体が地すべり地であることが伺える。3. 調査・研究手法 現地では,湖盆測量,検土杖を用いた簡易地質調査,湧水と沢水のサンプリングを行い,現地にて電気伝導度,ORP,pH,水温を測定した。持ち帰ったサンプルは役場から頂いた2010年出現時の池の水と共にイオンクロマトグラフィを用いて無機イオン成分の分析を行った。3. 結果と考察 標高654m付近で湖盆測量を行い等深線を示した結果,この池の最大長は130m,最大幅50m,周囲244m,面積4325m2,容積11375m³,となった。 水質分析の結果,2010年出現時のサンプルは各溶存成分量が乏しく雨水と変わらないことが判明した。池の100m程下った場所の沢水は2010年出現時の水質と比較して,各溶存成分量が高くなっていて,特にカルシウムイオン濃度の値は6.73mmg/lの値を示した。4. 今後の研究課題 池水の出現機構解明のために,湖盆に時期水位計を,水窪町役場に雨水採水器と転倒ます型雨量計を設置した。今後は,同位体水文学的手法を用いて涵養源の推定を行う予定である。5.参考文献杉森・佐藤・津田・尾口・小森(2001):遠州七不思議の池 「池の平」 の出現理由.日本地理学会発表要旨集,No.60,147.

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