日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P067
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発表要旨
モンゴルの1m深地温分布とその環境要因
確率分布図の作成に向けて
*山橋 いよ
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抄録

モンゴルでは、北部の連続帯から南部の点在帯へと永久凍土分布域が南北傾度で漸減し、永久凍土の有無はローカル地形起伏や植生被覆などに大きく依存している。よってこの地域での永久凍土分布図の作成には、このようなローカルな環境因子を反映させなければならない。 本研究では、ハンガイ山脈周辺 (N46–49°, E96–102°) を対象地域とした。この山脈の北部では、森林が北向き斜面にモザイク状に分布している。一方、南部には森林は分布しない。また、1280mから4020mまでの大きな標高差がある。これら植生・地形の多様性と永久凍土分布の関連を明らかにすべく、現地観測地と地理情報学的手法(GIS)を併せた研究を進めている。 2012年7月19日から8月13日にかけて摂取した、モンゴル国内の127地点の1m深地温データを用いる。また36地点のボアホール永久凍土温度観測データ(BH観測データ)を用いる。他にも、DEMデータ、気象データを使う。 まず1m深地温から下部の永久凍土の有無を判断した。判定においては、50cm地温法 (Fujii and Higuchi, 1976; Fujii et al., 1999) の概念を用いた。また凍土が存在するBH観測データの1m深地温の情報を基にし、判定基準を設けた。次に、凍土「有」地点の環境条件を、GISのSpatial Analystを用いて調べた。凍土の存在に関係する説明変数を導き、ロジスティック回帰モデルにあてはめていく。  1m深地温が9℃以下で凍土「有」、13℃以上で凍土「無」と判断された。草原における1m深地温は、標高と関係があった。しかしN49°以上では緯度による気候的支配が大きくなり、その関係は見られなかった。 森林下の地温は全ての地点において低く、凍土「有」と判断され、森林は凍土の存在に重要な要素であると言える。また森林の1m深地温は、緯度と負の相関があった。凍土「有」と判断される大部分の地点で1m深の土壌は湿っていた。 以上より現在、標高・森林・集水指数や日射等の地形因子を基に、環境因子と1m深地温の関係を調べている。本学会発表ではその進捗結果を紹介する。

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