日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P066
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発表要旨
ブラジル・アマゾンの自然と生活(3) 
-マウエスの一農場における土地利用と水文環境-
*宮岡 邦任吉田 圭一郎
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抄録

1.はじめにブラジル・アマゾン川流域では,熱帯林伐採による農場開発などにより,土地利用形態が大きく変化しているところも多くみられる。伐採後に農場として開発されたところの土地利用は,草地,ガラナなどの畑地,居住地,二次林など様々である。このような土地利用形態の変化は,局地的には水循環や水質をはじめとした地域環境に影響を及ぼしていることが考えられる。本発表では,アマゾン川中流域のマウエス近郊に位置する農場において,地形・地質,乾季における地表水および河川水の物理化学的特性についての調査結果を報告する。2.地形・地質の概要 研究対象の農場が位置するマウエスは,アマゾン川の中流域,ブラジルのパラ州に近いアマゾナス州の東端に位置する。大部分の地域で雨季と乾季があり,季節によって水に覆われる面積は大きく異なる。1年を通して水域や湿地の状態を維持している地域は河川近傍に分布する程度であり,それらの地域の周縁部に季節的あるいは数年に一度水没するヴァルゼアとよばれる低地が広がる。浸水の影響を受ける低地は,アマゾン盆地全体のうちの約5%程度であり,第四紀完新世の堆積物である。一方,ヴァルゼアの外側に分布する白亜紀後期から第四紀更新世にかけて堆積盆地に形成された台地はテラフィルメとよばれている。水面からの比高は対象地域では最大10m強で,台地面は緩い起伏を呈している。地表水は非常に乏しく,地下水面までの深さも台地であるため深く農場内に設置されている井戸の地表から地下水面までの水位は,乾季の始まりにあたる8月下旬で約8mであった。土壌は貧栄養のラトソルが分布しており,地表付近に腐植土層はほとんど発達していない。3.研究方法 農場において土地利用が異なる部分を通るように,河川の水際からテラフィルメを横断し反対側の水際までの約400mの測線を設定し,簡単な地形測量を行い地形断面図を作成した。対象とした土地利用形態は,二次林,ガラナ畑,草地,居住地,裸地である。測線に沿って上記の土地利用の下流にあたる水際付近に,深度の異なる観測井戸を6本設置し,地下水位,pH,水温,電気伝導度を測定するとともに,10mlの採水を行った。また,水際から河川沖合の深度2m地点まで,深度0.5mごとにpH,水温,電気伝導度を測定し,10mlの採水を行った。採水した試水は,主要8元素について溶存イオン分析を行った。4.結果および考察 対象地域の地質については,共通してラトソルが堆積していることから,同じ帯水層中を流れる地下水の水質が測定地点によって異なった場合,地表面環境の影響が地域的差異を生んでいると考えることができる。今回測定したそれぞれの土地利用条件の下流側における地下水の水質に,顕著な地域的差異が認められた。居住地やガラナ畑の下流側で水質が高く,二次林や最も内陸部に設置されている井戸の水質が,相対的に低かったことから,深刻な値でないまでも人為的な影響が現れていることが考えられた。さらに,水域における水質は深層部で若干水質が高い深度がみられる場所が存在した。このことは,地下水の流出口として河床から選択的に地下水が湧出していることを示している。 付記 本研究は科研費 基盤B(課題番号23401039 代表:丸山浩明)の一部である。

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